加西市でのPPP可能性調査報告会を開催

kasaikaiken2.jpgPPPスクール(大学院経済学研究科公民連携専攻)は、2月21日、兵庫県加西市において、同市におけるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)導入可能性調査の結果を発表した。同調査は、昨年4月より、加西市からの依頼に基づき、同大学PPPスクールの教員および社会人大学院生が、同市の財政・経済・社会の状況を踏まえて、今後の地域の発展に必要な戦略を客観的に抽出したものである。当日は、市民を中心に約460名が参加した。


本調査は、同大学院が2007年度より行っている地域再生支援プログラムの一環として行われたものであり、関西地域では初の実施となる。当日は、塩川総長、大学幹部をはじめ調査にあたった担当教員、院生が参加し、中川市長、市職員、市民に報告の後、意見交換を行った。

 

まず、塩川総長より、開会のあいさつとして、市の取り組みにより数年間に負債が1割以上減少されていることを指摘したうえで、今後は、官、民、住民のそれぞれにある官尊民卑の意識をなくし、民に委ねられるものは民に委ねるとともに行政がしっかりと責任を果たしていく公民連携が不可欠であるとの認識が示された。

 

kasaikp21.jpgその後、院生によるプレゼンが行われた。要旨は以下の通りである。

 

1 平成19年度末の加西市の負債総額は528億円、市民一人あたり107万円である。負債総額は、平成16年度以降減少傾向にあるものの、次世代にとって大きな負担がある状況は変わっていない。実質公債費比率は20.8%であり、非常に高い。

 

2 負債総額のうち下水道事業会計の負債が294億円、市民一人あたり59万円である。同会計は、年間2.1億円の赤字も計上している。主因は、公共下水道の整備が速やかに進行した(整備率97%)一方、各家庭への導入が遅れているためである(水洗化率73%)。家庭への接続は本来市民が行うべきものであるが、その結果、先行したインフラ投資に見合う収入のない構造的な赤字に陥っている。
これに対しては、家庭への配管接続事業を先行的に民間負担で行わせること、利用料増加分の一定割合を民間が得ることで投資回収可能にする新しいPPP手法を提案した。民の先行投資により、水洗化率を一気に引き上げることで、民にも市にもメリットが生じることを期待している。この方策による赤字解消効果は年間2.1億円である。さらに、管理業務を上水道と一体運営することや、将来的には、下水道を家庭用ゴミ処理にも用いること、投資だけでなくメンテナンスもPPP化するなどの複合化も検討する必要がある。

 

3 負債総額のうち病院事業会計の負債が37億円、市民一人あたり7.5万円である。同会計は、年間3.8億円の赤字も計上している。主因は、医業収入の落ち込み、医師不足などである。近隣の大規模病院の建設、施設の老朽化と更新の必要性など経営環境の厳しさを考えると、収入リスク、医師確保リスク、将来債務リスクは大きく、経営状況はさらに悪化する可能性が高い。

これに対しては、収入リスクを民間に移転する方法として指定管理者制度・経営移譲、病院敷地内で別収入を得る方法として病院敷地・建物の一部の高齢者向け施設への転換、医師確保・育成の方法として医師の労働負担軽減や臨床教育センターの設置を提案した。ただし、いずれも一長一短がある。市民が、この機会に財政を含む厳しい現実を踏まえて、適切な受益と負担のあり方の議論を行うことを期待している。

 

4 行政サービス全般をみると、人口千人あたり市の職員数は14.5人と、周辺自治体と比べて非常に大きく、財政の圧迫要因となっている。
これに対しては、内外の先行事例(我孫子市提案型公共サービス民営化制度、高浜市、米国サンディ・スプリングス市など)を踏まえつつ市の全事業を分析して、市が直接行わなければならない業務以外を包括的に外部委託するPPP手法を提案した。全事業の7割が包括委託の対象となっている。外部化に加えて包括化による効果により、人件費、事業費の削減効果(病院、消防以外)を年間23.8億円と試算した。

 

5 一方、加西市に対する通勤流出入は近年流入超過であり、県庁所在市以外としては珍しい特質を有している。主因は工場誘致の成功である。
これに対しては、既に立地済みの企業を地域内に維持することの重要性を指摘するとともに、きめ細かなレッドカーペットサービスを提案。再投資効果を期待している。
また、通勤流入者等からの居住希望が推測されること、現在世帯あたり人数の多い現状から将来的には世帯分離が予想されること、現状預貸率が低いため地域内に投資機会を作れば資金の地域内還流の可能性があること等より住宅建設を提案している。これにより、住宅建設投資効果、税収増効果などが期待される。
さらに、フラワーセンター、鶉野飛行場跡地ほかに多様な遊休地を使う開発を提案している。

 

6 まとめとしては、以下の点を指摘。
(1) 上記のPPPを効果的かつ機動的に推進するための総合的な組織としてKP21(仮称)の設立を提案している。公有資産活用(市庁舎のセール&リースバックを含む)や経済開発を含めて検討と実行を担う。
(2) 最近4年間の負債残高平均減少額が今後も維持されるとしても、現在の負債総額を半減させるには16年を要する状況にあるが、上記下水道PPPの導入および市役所業務の包括委託を加えると、負債半減までの期間が約6.2年に大幅に短縮されることになる。さらに、各パートで提案された公有資産活用、民間誘導のPPP手法を加えると効果はよりいっそう高まる。以上により、「子供につけを回さない」との目標が実現できることが検証された。
(3) KP21の設立と実施に向けて、ただちに検討に着手することを強く期待する。

 

kasaiichidou.jpg終了後、会場からは、家庭生ゴミの下水道への放流、包括民間委託への障害、公務員が行った方が安心できるのではないかなど多数の質問が寄せられ、担当院生が回答した(時間内に収まらなかった回答は、市のHPにて公開される予定となっている)。

 

 

 

最後に、中川暢三 加西市長からは、調査に対する御礼とともに、特に印象に残った点として、(1)病院の余剰容積を活用するという提案、(2)市の事務事業の内市が全部担うべきものが全体の5%という評価、(3)資kasaishicyo.jpg産活用の中の市役所のセール&リースバック(いったん売却後借り受けることで、行政サービスを維持しながら資産保有負担をなくし現金を得る手法)の3点があげられた。

 

本調査は、一旦加西市に提出されるが、本学としては今後具体化される段階においても、引き続き支援体制を取る予定である。