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<2019年10月29日>加藤聡さん(客員教授、6期生)が、公民連携専攻の推薦を受けて、国連PPP推進局に1年間勤務することになりました


 

 このたび、公民連携専攻の修了生で客員教授でもある加藤聡さんが、2019年11月から1年間、国連PPP推進局(ジュネーヴ)に勤務することになりました。日本のみならず世界的に財源の制約が厳しくなっている中、国連としてSDGsを推進するうえでPPPの活用は不可欠です。公民連携専攻は同推進局から国連CoE地方政府PPPセンターとして認証を受けていますが、加藤さんは、公民連携専攻の推薦と現在の勤務先である株式会社長大の支援を受けつつ国連でのPPP推進活動を担います。

 出発直前の10月29日には出発の報告に本学を訪問いただき、安齋理事長、竹村学長と懇談を行いました。席上、理事長、学長からは、「グローバル化、SDGsの推進など本学が目指す方向性と一致しており大変名誉なことと考えている。大学としてできることは最大限支援するので、存分に活躍していただきたい。」とのエールを送られました。また、懇談後には、加藤さんおよび根本専攻長へのインタビューを行いました。東洋大学では、PPPを世界に普及させるために今後も活動して参ります。

 

(写真左から)安齋理事長、根本専攻長、加藤さん、竹村学長 

加藤さん(客員教授/6期生)×根本教授 特別インタビュー

 

加藤聡さんプロフィール

現在、建設コンサルタントである株式会社長大において、経営企画部長とフィリピン子会社の社長を兼務。東洋大学大学院経済学研究科公民連携専攻客員教授のほか、早稲田大学非常勤講師。東洋大学博士(国際地域学)。

 加藤さんのプロフィールをお教えいただけますでしょうか?

 <加藤さんの回答>

 私は、東京で生まれました。初めての海外旅行が大学3年生の時でしたから、それまでは外国とか英語とはまったく無縁の人生を過ごしていました。
 早稲田大学を卒業した後は、教育出版の旺文社グループに入社しました。
 私は1974年生まれのいわゆる団塊ジュニア世代です。大学受験は受験戦争、卒業する90年代後半は、バブル経済も崩壊していて就職氷河期と言われました。ようやく就職したと思ったら、日本型雇用慣行も崩れ始めて、リストラという語が徐々に新聞紙上を賑わす時期を経験してきました。
 そこで、会社に頼らずに、自分の身は自分で守らないといけないと思い、平日の夜間と土曜日に講義を受けられる、立教大学のビジネススクールに入学しました。これが1回目の社会人大学院です。
 ここで出会った会計の先生の紹介で、2004年にマッコーリーグループというオーストラリアの投資銀行に転職しました。インフラ投資の分野では世界的にトップクラスの実績を有する会社で、ここでPPPやPFIというものを知ります。
 実は、私が根本先生と初めてお会いしたのはこのビジネススクールです。当時はまだ日本政策投資銀行に勤務されていましたが、「プロジェクトファイナンス」という講義をご担当されていました。
 その後、2008年にリーマンショックがあり、日本のインフラ投資事業を縮小するという方針変更がありました。そんな時期に、マッコーリーとは反対に、インフラ投資も含めてPPPを積極展開していこうとしていた、現在勤務する長大という建設コンサルタント会社に転職をしました。それまでは主に金融の立場からPPPを見ていましたが、もっと広い観点で、かつ体系的にPPPを学びたいと思うようになり、公民連携専攻への入学を決意しました。2回目の社会人大学院です。

 そして、公民連携専攻に在学していた2011年に、田渕先生の「PPPプロジェクト演習」という講義で、フィリピンのミンダナオ島に現地調査に行きました。この時まとめた報告書をもとに、長大としての事業を開始し、今では複数の事業へと展開しています。この事業群は、2017年には国連欧州経済委員会から、世界のベストプラクティスとして挙げられた10事業の1つに選ばれました。

 そうして地域開発や開発途上国の経済開発に取り組むうちに、この分野の専門知識をさらに深めたいという思いが強まり、2015年に東洋大学の国際地域学研究科の博士課程に進学しました。3回目の社会人大学院です。引き続き長大での勤務を継続し、フィリピンの事業にも関与しながらも、2018年に博士課程を修了し、今年度からは公民連携専攻で客員教授として「世界のインフラPPP」という講義を担当しています。

 今回の国連PPP推進局のシニアスタッフとして出向が決まった経緯についてお教えください

 <加藤さんの回答>

 東洋大学は、国連PPP推進局が世界各国で展開しているPPP拠点づくり活動(国連CoE)の一拠点である「地方政府PPPセンター(Specialist Centre of Excellence on PPPs in Local Governments)」に認定されています。東洋大学がPPP推進局と長く深い関係にあり、職員を派遣したりしていることは知っていましたが、私とは関係ない遠い世界のことのように思っていました。

 そんな中で、2015年8月に東洋大学が主催した「第10回国際PPPフォーラム」に登壇する機会がありました。PPP推進局のジェフリー・ハミルトン局長ほか、これから一緒に働くメンバーに初めて会ったのがこの時です。

 また、2017年5月には、国連欧州経済委員会が香港で開催した「国際PPPフォーラム」で、公民連携専攻のサム田渕先生と一緒に登壇する機会を得ました。このフォーラムで、上述したミンダナオ島の事業群が、世界のベストプラクティスの1つに選定されています。その後、11月にも、スイスのジュネーブで開催された国連PPPワーキングパーティに、当時副議長の任にあった田渕先生の計らいでオブザーバー参加させてもらいました。

 こうして国連との接点が増えるにつれて、私にとって国連が身近な存在になってきて、田渕先生から、国連で勤務して彼らに直接刺激を与える道もある、勤務に興味があれば相談をしてみますよと言っていただいたことが、今回の出向のきっかけになっています。
 学生とのこうした些細な会話もしっかりフォローしていただけるのも公民連携専攻の特徴ではないかと思います。

 国連ではどのようなお仕事をされることになるのですか

 <加藤さんの回答>

 まずは12月に開催される第3回PPPワーキングパーティに関連する事務局としての業務が中心になると思います。その後は、委員会やPPPフォーラムが開催されますので、それらに関する業務に従事することになるはずです。

 今、SDGs(Sustainable Development Goals)、すなわち持続的な開発目標というワードが注目を集めています。SDGsは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)に続くものとして,2015年9月の国連サミットで採択された、持続可能な開発のための17のグローバル目標と169のターゲットからなる2030年までの国際目標です。

 公共には予算や人的リソースの制約があるため、国連も、SDGsの実現手法としてPPPに対する大きな期待を持っています。
 PPPの実現には民間の参画が不可欠です。私は、公共サイドでの実務経験はありませんが、民間セクターでは数多くのPPPを経験してきました。また、公民連携専攻でPPPを学び、博士課程の研究でもPPPを対象にしています。単に実践だけでなく、学術的な観点からもPPPを経験、理解している人材だといってよいのかもしれません。

 PPP推進局も、こうした私のバックグラウンドを評価して、期待してくれているのだと思います。一方、公民連携専攻、ひいては東洋大学を代表している面もありますので、それに応えられるように役割を果たしたいと思います。

 公民連携専攻への入学を検討している方へひとことお願いいたします

 <加藤さんの回答>

 私が、公民連携専攻に入学したのが2011年、修了したのが2013年です。私の人生は、公民連携専攻で学んだこの2年間で大きく変わりました。

 まずは、公民連携専攻でのPPP調査が実際のビジネスにつながる契機となりました。そして、そのビジネスが展開し、拡大する中で、新たな研究テーマと意欲が生まれて、実務に携わりながら、博士課程に進学する機会を得ました。同じテーマに実務と学問の両面から対峙するような環境は、誰にでも与えられるようなものではない貴重な機会であり経験だと思います。

 また、私は今年度から、公民連携専攻の客員教授として春学期に講義を担当することになりました。このようなことは、数年前にはまったく想像もしていませんでした。国連の勤務というのも同様です。

 私の好きな言葉に「セレンディピティ」(serendipity)というのがあります。Wikipediaによれば、「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ること」という意味です。
 私自身、「とりあえずやってみて」、「どうせやるならちゃんとやる」、「やる以上最後までやり切る」ようにしてきました。そうしていろいろやっていたら、振り返って見たときに、知らないうちに「点」が「線」になっていたと感じることが多々あります。

 また、私は3回にわたる社会人大学院で経営学、経済学、国際地域学を学びましたが、実は「文学部哲学科」の卒業です。井上円了先生のお言葉で、東洋大学の建学の精神でもある「諸学の基礎は哲学にあり」は、まさに今強く実感するところで、いろいろと思索に耽った哲学科の学部時代が今の私の礎となっているように思います。

 「学生」には特権があります。「学生」という立場ならではの、できることがあったり、出会える人がいます。社会人でも、大学院ではこの「学生」になれます。
公民連携専攻は、PPPを専門にした大学院です。このようなターゲットが明確な世界だからこそ、ここで構築できるネットワークには非常に価値があると思います。

 興味を持った方は、まず「入試個別相談」にご参加いただき、根本先生の公民連携専攻に対する熱い思いを感じてもらいたいと思います。

 

根本専攻長からのメッセージ


派遣が決定した加藤さんについて根本専攻長に話を伺いました。

 今回派遣される加藤聡さんは、公民連携専攻の在学時代はどんな学生でしたか?

 <根本専攻長の回答>

 公民連携専攻は、仕事上の課題をそのまま持ち込んで、PPPの観点から客観性と合理性のある解決方法を学び、実際に課題を解決できるレベルまで到達することを目標にしています。そう簡単なことではないと思いますが、院生の皆さんは修了後も多大の努力を積まれ、多くの成果につながっています。加藤さんは、そうした院生の中でももっともエレガントに仕事と学業を両立させた方です。学業面でのパフォーマンスに加えて、実際にフィリピンのプロジェクトに参加し、修了後は自らインフラ整備を支援する部署を立ち上げてPPPプロジェクトを推進し、そこで得た知識を用いてPPPの論文を発表しています。PDCA(plan-do-check-action)を実践している稀有な人材だと思います。今思えば、おそらく院生時代からそうした将来展望を抱いて、勉学に人脈作りに励んでいたのでしょう。

 国連PPP推進局のシニアスタッフに対して、公民連携専攻はどのようなサポートができますか?

 <根本専攻長の回答>

 東洋大学は国連CoE地方政府PPPセンターとしての役割があります。また、サム田渕教授は国連PPP専門家会議の共同議長に就任しています。その役割を果たすことが自動的に加藤さんをサポートすることになると思います。地方政府PPPセンターは、昨年度までは地方政府にとってのPPPのベストプラクティスを世界に発信していました。加藤さんが参加したフィリピンプロジェクトはその一つでした。今後は"PPP-SDGs基準"制作を行う予定です。SDGsの基準は国の政策全体の成果目標として制作されておりますので、国と地方、政府、市場、地域の各セクターがそれぞれどのような役割を果たすべきなのかは今後の課題になっています。東洋大学は国連CoE地方政府PPPセンターとしてその役割を積極的に担います。加藤さんは国連側の窓口として調整役を担ってくれることと思います。サポートというよりは協働と言った方が良いでしょう。

 公民連携専攻にはシティ・マネジメントコースやグローバルPPPコースがあります。それぞれどのような方に入学してほしいですか

 <根本専攻長の回答>

 3コースの主たる対象は、シティ・マネジメントコースが公務員、PPPビジネスコースが建設、不動産、コンサルタント、金融などの民間企業社員、グローバルPPPコースが海外PPPに関連する期間や民間企業社員や留学生となっています。ただし、どのコースを選んでもすべての科目、ゼミを履修することができます。日頃なかなか接点のない官民の人材が大学院生という対等の立場で付き合えるのが、公民連携専攻の最大の価値と言えるかもしれません。PPPは公共性と効率性の同時実現を目指します。効率性に関心のある官の人材、公共性に関心のある民の人材など自分の壁を破りたい多くの人材の挑戦を待っています。

  理事長、学長に今回の派遣について報告をする加藤さん

 ※掲載されているインタビューは2019年11月頃行われました。