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<2006年09月>「官から民へ」スローガンからソリューションへ

 「官から民へ」を旗印とした小泉政権が間もなく終わり、安倍氏が後継首相になることが固まった。「官から民へ」は終わるのか、新政権でも続くのか注目されている。筆者は、「官から民へ」の流れは止まることはないと考えている。
理由の第1は、国と地方の財政制約の激化である。厳しい予算の中で、ニーズの強い事業を実行しようと思えば、必然的に効率化せざるをえない。民間感覚が必要となるのである。実は、この流れは1980年代以降の先進国に共通している。小泉政権は、こうした歴史の流れに忠実すぎるぐらい忠実だったのであり、船頭が変わっても船は進み続けるとみるべきである。

 理由の第2は、わが国固有の事情としての公務員の高齢化である。現在、地方公共団体の現場では、最前線の職員の高齢化が進み、数年内に団塊の世代である彼らが大量に退職した後の深刻な人材難が予想されている。官に人がいない以上、民に仕事を託さざるを得ない。

 以上二つの理由をもって、「官から民へ」は基調としては変化しない、というより変化したくてもできないだろう。

 では、「官から民へ」は順調に進むだろうか。実は容易ではない。

 そもそも、「官から民へ」は、官が、市場メカニズムでは十分に公共サービスを供給できないなどの「市場の失敗」を補うための役割を担いながら、予算の肥大化、供給の非効率性という「政府の失敗」を引き起こしていることへの反省から生じた動きである。単純に市場に戻しても、再度「市場の失敗」が生じるだけである。このように、官と民のいずれが妥当かという単純な二分論では、「市場の失敗」と「政府の失敗」を無限に往復する迷路に陥るだけである。

 迷路を抜ける知恵が公民連携(Public/Private Partnership)である。官は公益とは何たるかを考え、官がすべきことを前提にして民の提案を受けて契約し、民はその契約に基づいて実行する。両者が得意な役割を分担することで、社会的に望ましい結果をもたらすことが目的である。PFI(Private Finance Initiative)、指定管理者、市場化テストなどはすべてこの発想に基づいている。市場に委ねた郵政民営化でも、過疎地の郵便サービスを維持するには公民連携の手法が使える。

 残念ながら、こうした手法は、「官から民へ」という単純なスローガンに比べると、専門的で複雑で地味である。だが、地域の現場は、地味でも具体的に課題を一つ一つ解決する知恵を求めている。スローガンからソリューションの時代が始まったのである。新政権には、官と民のソリューションに向けた努力を促す役割を強く期待したい。

 なお、公民連携は具体例を通じると分かりやすい分野である。今後機会を得て少しずつご紹介していきたい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)