1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2006年10月>「破綻法制とプロジェクト・ファイナンス」

<2006年10月>「破綻法制とプロジェクト・ファイナンス」

 安倍政権が誕生してはや半月以上が過ぎた。この9月まで5年間の長きにわたって続いた小泉政権の政策が劇的であったため、新政権での数々の政策の行く末は多くの人が注目していることと思う。
 その中の一つで、安倍政権誕生と同時期の9月25日に発表されたのが、総務省の新地方財政再生制度研究会の報告書である。竹中前総務相のもとでいわゆる自治体の破綻(はたん)法制導入を検討すると思われていたこの研究会は、小泉総理、そして当の竹中氏の退陣とともに第一幕を閉じた。

 iJAMPニュースでは「『借金棒引き』などの債務調整や司法の関与については、国による関与・義務付けの廃止、地方債の完全自由化などの抜本改革実現を前提とした検討課題とした」とされている。一見、事実上の凍結かと誤解されかねないエンディングである。

 言うまでもなく、自治体の破綻は架空の話ではない。9月29日、夕張市議会は地方財政再建促進特別措置法に基づく再建申請を可決している。50億円に満たない標準財政規模に対して「600億円を超える実質債務」を抱える財政の再建という途方もない課題が残された。

 民間金融の世界では、こうした場合債務調整がなされる。債権カットである。債務者が破綻すれば、将来債権カットされかねないということが、債権者が最初に貸し出す際の規律を高め、安易な貸し付けを抑制する。

 さらに、最近ではプロジェクト・ファイナンス(返済財源を事業から得られる収入だけにとどめ、親会社に遡及させない貸付方式)が一般化している。実力だけが頼りであるため、プロジェクトの企画時には厳しく審査され厳しい条件が付される。

 一方、自治体が主体となっている事業では、最終的には債権は保全されているので貸し手としては安心である。借入条件も有利となる。この結果、あえて厳しい民間金融の世界に飛び込むよりは、相対的に楽な財政に依存する傾向が官民ともに生じやすくなる。

 多くの自治体が真剣に財政再建努力に取り組み、また、政策目的の実現のために必死に努力していることは全く否定しない。であるが故に、財政依存の安易な傾向がさらに増加して、自治体の努力を無にしてしまうことを懸念するのである。

 一見厳しいと思える債務整理は、決して地域を大事にすることと矛盾しない。債務整理の結果、事業が継続され地域産業を維持することができるからである。近年急速に増えた事業再生案件の多くは、それが現実であることを示した。いずれにせよ、自治体財政を再建し地域を再生するためには、何らかの方法での破綻法制の導入は避けて通れないのではないだろうか。

 今後、毎月一回、前月のiJAMPに掲載された記事の中から、特に、官と民の役割分担や相互の関係に注目すべき記事を取り上げる。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)