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<2006年12月>情報開示による社会的な検証を

 福井市の指定管理者制度導入の第1号であった国民宿舎「鷹巣荘」が、2005年10月導入後1年の収支報告を発表した(11月13日iJAMP)。
同荘は1969年の営業開始時から赤字状態にあり、設備やサービスも陳腐化して経営はじり貧状態にあった。だが、指定管理者となった民間企業の手で、露天風呂開設、新メニューの開発、インターネットの旅行サイトとの契約など積極的な経営に転換するとともに、コスト面でも、パートの活用、関係会社との共同仕入れ、「歯ブラシ一本に至るまでの」徹底したコスト管理など多くの努力が払われ、短期間での成果につながったとされている。

 「民の力で黒字になる」という絵に描いたような成功事例である。自治体は重荷から解放され、民間は収益機会が得られ、市民及び観光客には良質なサービスが提供された。三者ともに利益のある解決策だったのである。事業者の努力やそれを認めた市の判断は賞賛されるべきであろう。

 だが、もう少し子細にみると、課題となるべき点が浮かび上がってくる。今後の案件への教訓の意味も込めてここで整理しておきたい。

 第1は役割分担の重要性である。宿泊施設というきわめて経済的で不確実性の高い業務は、官自らではなく民に実施させる方が良いという発想に異論はない。だが、「民が良い」イコール「完全に民に移転する(民営化)」ではなく、施設の所有権及び公共サービスとしての供給責任を官が維持する指定管理者制度が採用された理由は何だろうか。

 確かに、施設保有責任から解放することで民のリスクは軽減されるとともに、公共サービスの質は管理しやすいという利点がある。だが、民営化と比べて、公共サービスとして維持することの必要性、民の役割の妥当性には分かりやすい説明が不可欠である。

 第2は情報開示の重要性である。指定管理者による収支報告だけでなく、直営事業の収支もホームページなどから簡単に市民が閲覧できるようにする必要があるのではないだろうか。鷹巣荘が1年で黒字になったということは、他にも同様のレベルのものが眠っていないか。あるとすれば、何らかの手法で民と連携して、地域経営全体のパフォーマンスを引き上げていくべきである。情報が開示されていなければ、民や市民はそれを判断できない。

 現在、千葉県我孫子市では市の事業全体を対象に、実施可能と考える企業やNPO(民間非営利団体)が提案できるとする公共サービス民営化の提案制度を実施中である。民間活用の検討を官だけで行うのではなく、このように、民間企業、NPO、市民の視点が盛り込まれるような方策の導入が広がることを期待したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)