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<2007年01月>PFI報告書への注文

 昨年12月26日、内閣府は「PFIアニュアルレポート(平成17年度)」を発表した(12月27日iJAMP)。本報告書は、政府によるPFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアチブ=民間資金活用による社会資本整備)に関する初の公式報告書として、1999年の法施行以降2005年までの動きをとりまとめている。
 特筆すべきことに、事業費の実額1兆7546億円を公表した。民間にとっての魅力を決める「規模」を示した意味は大きい。一定の規模がなければ、ノウハウを蓄積して活動しようとは考えないからである。

 また、客観的に課題を指摘している点も評価できる。案件数の増加と事業の進捗(しんちょく)に伴って、(1)安全確保など運営段階での課題(2)資金調達手法の多様化(3)モニタリング・ベンチマーキング等事後チェックの必要性-など、実績を踏まえた指摘がなされている。

 以上を評価した上でなお3点注文したい。

 第一は、市場規模の自己評価である。2兆円弱の規模を政府としてどう考えているのだろうか。6年間の累計値であり、単純に年間の公共投資額に比較できないとしても、せめて英国の規模(13年間累計で450億ポンド)と比較して評価するなどの工夫は可能であろう。

 少なくとも、筆者には、年間100兆円を超える政府支出(GDPベースの政府投資と政府消費の合計)に比べて、年間換算数千億円のPFI事業規模が大きいとは感じられない。無理せずに「小さい」という自己評価からスタートすれば、拡大を阻む障害も鮮明に見えてきて、おのずと処方箋(せん)が浮かび上がってくるのではないだろうか。

 第二は、小規模PFI導入の必要性の明記である。固定的な手続費用を要するPFIには20~30億円といわれる最小事業規模が存在する。この結果、小規模自治体はもとより、ある程度の規模の自治体でも累積で数件程度の実績しか出せない。この結果、自治体職員は習熟せず毎回ゼロからのスタートになり、いつまでたっても最小事業規模は低下しない。

 筆者の経験からすれば、導入可能性調査、実施方針・選定基準・契約書案等の策定を標準様式で処理すれば大幅に費用は節約されるはすである。市場に任せても標準化が進まないのであれば、政府の仕事であろう。

 第三は、他の手法との比較である。現場では、特定の政策の実施を民間企業や市民団体に委ねたいと思った場合に、PFI、業務委託、指定管理者、市場化テスト、民営化などさまざまな手法の中から選択する。最初からPFIと決め打ちしない。

 縦割りなのは国の組織だけの問題であり、地域の実務者は最善を求めてすべての手法を検討するのが一般的だ。もしすべての手法を検討していないなら、そうすべきである。PFIに閉じることなく、他の手法の利点(例えば、指定管理者の利用料金制、市場化テストの官民競争入札)をいかに取り込むか、あるいは、PFIの持つ利点(例えば、民の独創的なファイナンスの導入、地方財政負担の軽減効果)をいかに普及させるかなどの観点が必要である。

 以上、次回アニュアルレポートへの反映を期待したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)