1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2007年03月>公立美術館でまちなか再生を

<2007年03月>公立美術館でまちなか再生を

 JR静岡駅北口の再開発ビルの一角に市立美術館を建設し、近隣の文化施設との連携による講座やワークショップを開催するとの静岡市の計画案が発表された(2月14日iJAMP)。再開発ビルは2010年度完工で、美術館には指定管理者制度を採用予定とされている。
この美術館は、駅前立地、かつ、ビルの一角を使うという顕著な特徴を有している。広い敷地に立派な独立建物を持つのが通り相場のわが国の公立美術館にあっては、英断といって良い。ハードにお金をかけない分企画運営に注力できるし、駅前立地の利点を活かせば市民の交流の場となる。指定管理者制度を活用して民の知恵を入れることも賛成である。それを前提にして運営内容に関して要望させていただきたい。

 周知の通り、美術館には金銭に評価できる管理運営部門と、金銭に評価できない文化的事項を担当する学芸部門がある。まず、管理運営に当たっては大胆な発想を取り入れてもらいたい。ミュージアムショップやミュージアムカフェには、展示品と連動して文化をテーマにする大胆な店舗コンセプトがありうる。駅ビル立地を考慮して他のテナントと同様の営業時間確保も必要である。

 また、空間利用も期待できる。美術館は、展示物はもとより、空間や造作類も普通のホールと異なる魅力を持っている。こうした資産を有効に活用して、美術館が開業していない休館日や夜間に、結婚披露宴、しのぶ会、企業の株主総会、新製品発表会、学会のレセプションなど比較的格式の高いイベントへ貸し出して収入を得ることは十分に可能である。

 一方、「収蔵品は購入しない」とされているが、展覧会の企画などいわゆる学芸業務は当然存在するだろう。学芸員を市の職員とするとしても指定管理者の職員にするにせよ、特性を活かした運営を行うには、従来とは違う発想が必要である。

 なぜ駅前立地にしたのか。そこには市の文化政策との関係があるはずである。勤労者や専業主婦など従来文化になじみの薄い層を集め、文化への関心を高めいずれは静岡に文化産業の集積を実現していく、さらには文化以外の分野にも市民参加を促したいという着眼などである。アートと産業を結び付けて地域を再生したスペインのビルバオやフランスのナントの事例もあり、地域における美術館の位置づけの明確化は必須である。

 さらに、政策を具体的な活動目標に落とし達成度を客観的に把握できるようにすべきではないだろうか。しばしば文化は金銭で評価できないと言われるが、金銭で評価できなくても客観的な成果目標は設定できる。

 芸術家のアウトリーチ(まちなかに出て人々に芸術を間近に接する機会を提供する)活動の回数や、アンケートによる地元の芸術家の知名度向上の把握、地場産業との協働事業の回数など、知恵次第で工夫はできる。市民への説明責任は格段に向上するだろう。実は、美術館の事業に目標を設定する試みは、静岡県立美術館のミュージアムナビという仕組みですでに始まっている。貴重な先人の経験を生かさない手はない。

 いずれにせよ、駅前ビルに立地する本美術館が、その特徴を十分に生かして、新たな公立美術館像を提示してくれることを心から期待したい。もちろん、静岡市以外の公立美術館にもまったく同様の論点があてはまることは言うまでもない。

 (公立美術館における民間活用に関しては東洋大学大学院生寺井素子氏が詳しく議論を展開している。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)