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<2007年04月>旭山動物園の成功にみる“地方の常識”の落とし穴

 3月6日、夕張市が正式に財政再建団体の指定を受けた。すでに公表された2007年度予算案は、「事業数の約4割の廃止、人件費の大幅な抑制(職員の半数の退職、一般職員の給与の平均約3割削減)、個人市民税や固定資産税の引き上げなどで、前年度比30.2%減」とされている(3月9日iJAMP)。こうした厳しい予算を組んでも「今後18年間で353億円の赤字解消を目指す」(同)との目標は高いが、まずは新しい節目にエールを送りたい。来る4月22日の市長選では、ぜひ、すべての市民が未来の地域を作る選択に参加してほしい。

 3月27日には、同じ北海道の明るいニュースがあった。「旭川市の旭山動物園の年間入場者数が初めて300万人の大台に乗った」(iJAMP)ことである。全国の動物園の入場者数としては、東京の上野動物園に次いで第2位である。衰退していた市立動物園が、動物の姿を見せる「行動展示」という起死回生の工夫で見事に再生した。つい先日までは、冬季限定の「ペンギンの散歩」が人気を呼び、全国の動物園の夢である通年集客を実現している。

 旭山動物園の成功は“地方の常識”を覆した。それは、地域を再生するには“個性”、“市場”、“知恵”が必要という思いこみである。筆者は、仕事柄多くの自治体の方々と話す機会があるが、特に地方圏ではこの三つの要素がないので再生は無理という話をしばしば聞く。だが、実は旭山動物園にもそれはなかった。

 第一に旭川には個性ある観光資源はなかった。旭山動物園はもともとあった月並みな動物園を立て直しただけである。いわばゼロから個性を創造したのである。第二に旭川の市場は小さかった。市内人口は35万人あるが、札幌圏からは遠くわざわざ観光で訪れるような場所ではない。そこに全国から人を呼び込んだのである。第三にもともと誰かの知恵ではなかった。動物園の職員が、日本では誰も考えつかなかった工夫を思いつき地道に積み上げていったのである。

 北海道には他にも成功事例がある。ニセコ地域は、パウダースノーに加えて、昔から流れている川を使った遊びを考え出し、今やオーストラリアからも注目されるラフティングのメッカとなった。帯広市の北の屋台は全国で最も活気のある屋台村として、客だけでなく出店を夢見る全国のチャレンジャーの注目も集めている。いずれも、市場のない場所で、知恵により個性を創造した例である。

 もちろん、単なる思いつきが常に成功するほど甘くはない。綿密な戦略やリスク分析、組織的な責任体制、関係者の役割分担、トップのリーダーシップなど成功の秘訣(ひけつ)はまだまだ多いだろう。だが、少なくとも、思いこみにとらわれないことは必要条件である。旭山動物園は、“地方の常識”を言い訳にしてはならないことを教えてくれているのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)