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<2007年05月>市民・企業提案による公共サービス実現へ、横浜市、東京都などの挑戦

 横浜市が、「新庁舎の建設地や跡地利用などのアイデアを、アンケート方式で広く市民から募集すると発表」した(4月12日iJAMP)。「現在の庁舎は建築後約50年を経過して老朽化が進み、…(略)、オフィスを周辺の民間ビル15棟に分散しているため、賃貸料が年間約18億円かかるほか、行政サービスの低下も指摘されている」とされている。
庁舎は最大の公共施設である。その立地、規模、グレードには、納税者であり利用者である市民の意思があるはずだ。だが、今まで、これほど幅広く市民の意見を聞いたことがあっただろうか。市民不在の意思決定は、後日、豪華すぎる、便利が悪い、利用しにくいなどの批判につながる。今回の試みは、1995年に発表された新市庁舎整備審議会答申に「市民の理解を得ながら円滑に進められることを期待する」と記されたことが発端であるが、誰もが参加できるアンケート形式の採用は、中田宏市政だからこそ実現できたことである。

 さらに驚くべきことに、民間企業から、事業手法、建設維持費用を効率化するための効果的な手法などの提案も受け付ける。事業手法や費用計算は、民間企業、特に、同様の都市開発事業の経験のある建設、不動産、商社、金融機関等の企業が得意な領域である。より得意な者の知恵が入ることで地域全体の費用対効果の引き上げが期待できる。新市庁舎の規模は17~19万平方メートル(駐車場を除く)とされる(前述答申)。職員、来庁者を含め毎日大勢の人が出入りする複合ビルであり、民間にとって魅力あるチャンスであることは間違いない。

 また、今月に入り、東京都が事務事業全般を対象に「民間で実施可能と考えられるものや、民間での実施を可能とするための条件」の意見募集を行うと発表した(5月2日iJAMP)。全事業を対象に民間での実施可能な事業を募集するのは、千葉県我孫子市が導入した提案型公共サービス民営化制度や、愛知県、北海道などに続くもの。東京都は、行政規模が非常に大きいことに加えて、市場化テストだけでなく指定管理者制度、PFIの導入、国の規制緩和など幅広く検討していくことに大きな特徴がある。公民連携の観点から見ると、この影響は大きい。

 これらの動きは、公共事業の実施プロセスだけでなく、意思決定プロセスにまで民の知恵を導入しようとするものである。最終的に民に委ねるのであれば、何を委ねるかの段階から意見を聞くのが合理的である。アイデアの保護の問題など改善すべき点はあるものの、従来からすると大英断であることは間違いない。民の側がこの貴重な機会を生かすこと、また、官の側がその提案を真摯(しんし)に受け止めて「民でできることは民で」進めていくことを強く期待したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)