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<2007年06月>歌舞伎町ルネッサンスにみる法律・政治の役割

 一町名でありながら頻繁にメディアに取り上げられることで有名なのが東京・新宿の歌舞伎町である。5月のiJAMP記事でも6回も登場している。おそらく他に例がないだろう。ただ残念ながら、そのうちの4回が、「不法滞在の外国人雇う」、「強盗団に潜伏先提供」などの負の情報である。歌舞伎町と聞いて犯罪を連想しない人はいない。
実は、その歌舞伎町が見違えるように安全になった。違法性風俗店、消防法違反建築物、不法滞在者を、警察、消防、入管当局が連携して徹底的に摘発するとともに、地元関係者がクリーンアップ活動を進めたためである。数年前、一連の浄化活動が始まったときに冷ややかに見ていた人も、今やその成果には舌を巻いている。

 先月25日、内外情勢調査会で講演した中山弘子新宿区長によると、歌舞伎町は第二次世界大戦後、地元住民が自主的に街づくりを進め「子どもから大人まで楽しめるモダンな街を目指していた」(5月25日付iJAMP)という。その頃の気風を取り戻し、「劇場や関連産業を集積させ、東洋のブロードウェーにしたいとの思いで地元と一緒にやっている」(同)。健全な娯楽の町としての再生を掲げたビジョンに向けて、区長のリーダーシップの下、関連機関の協力と本気になって成し遂げようとした地域住民の努力がようやく実を結んだ形になっている。

 歌舞伎町の取り組みは、法律の力およびそれを徹底させる政治力と、経済の連携の必要性を示唆している。法律の役割は社会秩序の枠組みづくりであり、政治はそれを守る強い力を与える。経済からみれば、枠組みを守ってフェアに行動する人が損をしない保証を与えてくれているのである。

 区長が講演で触れたブロードウェーでは、年間数千件の凶悪犯罪が発生し、住民からも企業からも見放された1980年代中盤以降、ジュリアーニ市長(当時)の主導により、厳しい用途規制や強制買収権も用いて、ついに地区から犯罪を追放した。そして、健全な町の象徴として、ディズニーの劇場、シネコン、タッソーミュージアムなどの娯楽産業を誘致した。この努力が奏功し、大手の法律事務所、金融機関、コンサルタントなども次々に立地していった。このように、首長のリーダーシップにより地域のビジョンが明確化され、法律と政治によってその枠組みが確固としたものとなったうえで、安心して経済活動は始まる。歌舞伎町が目指す道はここにある。

 実は、この議論は全国各地にあてはまる。地域の景観や文化や歴史、地場伝統産業など守るべきもの、あるいは地域の発展のために排除すべきものがあるなら、ルールとして定めて明示しなければならない。条例や首長のリーダーシップはそのためにある。経済の合理性とは何ら矛盾しないどころか、ビジョンの実現可能性が明確になり将来リスクのない投資環境が実現する。ルールを守る健全な経済活動が始まる。歌舞伎町は決して特殊事例ではないのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)