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<2007年08月>住民討論の三つのルール-岩手県紫波町報告会から得られる示唆

 8月12日、東洋大学は、岩手県紫波町より依頼されたJR紫波中央駅前の低未利用地を公民連携(PPP=Public Private Partnership)により有効活用できるかどうかの可能性調査の報告会を開催した(8月20日iJAMP「情報発信コーナー」投稿)。お盆休みの日曜日にもかかわらず、会場には250名もの参加者が集い、予定時間を大幅に超過しても熱気あふれる会議が続いた。

 さて、この貴重な機会を通して、住民が集まって一つのテーマを建設的に論じるという一見困難なことも、以下の三つのルールを守れば十分に可能だということを感じた。

 第一は、「直視」のルールである。発言者全員が、財政難、施設老朽化などの問題、環境や自然などの資源や地理的な優位性など大学が示す町の現実を認識し、正面から質問や意見を提示していた。

 当然に思えるかもしれないが、実際に各地の公式、非公式のまちづくりの議論の場に同席すると、「そこまでがんばらなくても何とかなるから大丈夫」という自信過剰や、「格差を助長する国の政策が悪い以上何をしても無駄」という不満過剰の意見にしばしば出くわす。

 それが本当だとしても、だからといって、今できることをしなくて良い理由にはならない。自ら真剣に考えようとしない地域に、第三者は投資してくれるだろうか。町の若者が一生地域を支えていこうと思うだろうか。まず、地域の現実を直視する必要があるのである。

 第二は、「代案」のルールである。今回の調査の主要な結論は、PPP手法により、老朽化した町役場庁舎を小さな財政負担で移転し、建て替えることが可能という点であった。

 この案に対して、現在地(中心市街地の商店街)で建て替えるべきという意見が出た。単なる商店街保護ではなく、公共施設を集中させることで空洞化を防ぐべきとの指摘は合理的であり、当日の議論の水準の高さを象徴するものであった。代案があってはじめて原案も評価しうる。大学の案は、駅前土地のポテンシャルは非常に高く、民間に幅広い自由度を与える米国型PPP手法により、結果的に財政負担を最小化できると結論づけている。

 一方、相対的に魅力の乏しい現在地での建て替えはPPPで可能かどうかは不明であり、仮にできたとしても住民の負担はかなり増える可能性が高い。どうバランスを取るのか。代案が提示されたことで次の宿題が見えてきたのである。

 第三は、「前進」のルールである。紫波町では、今後数十回の住民説明会が開催される。単なる利益誘導競争ではなく、財政負担と住民福祉のバランスの取れた計画を決めるためである。このプロセスでは、議論の蓄積を踏まえて少しずつでも前進して行かなくてはならない。堂々巡りの議論は議論とは言えない。

 町が、議論の内容をインターネットなどでできるだけ公開すること、住民も議論の経緯を勉強したうえで町全体の経営の観点から参加することが強く望まれよう。

 「直視」、「代案」、「前進」の三つのルールは、もちろん、紫波町だけのルールではない。住民参加はすべての地域で必要とされる。建設的に進めようとする地域において、この三つのルールが参考になれば望外の幸いである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)