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<2007年10月>現実味を帯びる国土崩壊のシナリオ―三重県立博物館”閉鎖”の教訓

 10月10日、三重県立博物館が事実上閉鎖された。「1953年、東海地方で初めての総合博物館として開館」(10月10日iJAMP)した同館は、本年で54年経過し、耐震性に加えて、「外壁のタイルが剥落(はくらく)するなど老朽化が進み、これ以上の展示営業は危険と判断」される状態であった。「県は86年からたびたび新博物館建設に向けた検討を進めてきたが、いずれも多大な費用が掛かるなどの理由から計画を凍結」、「今後、県立図書館2階の文学コーナーを間借りして展示を行う」と伝えられている。新博物館建設の是非については、今年度中に文化審議会などでの議論を経て、結論が出る予定、という。

 現役の公立博物館が老朽化によって突然自らのハコを使えなくなるという、異様に思える事態から得られる教訓は何だろうか。

 第一は、更新計画の重要性である。民間企業が行う減価償却は費用であり、投資資金に対する金利とともに企業の収益を圧迫するので、おのずと過大な投資は抑制される。一方、この仕組みにより資金を社外に流出させることなく、更新のための資金を蓄積させることができる。負担は分散化され、必要な時期に更新が可能になる。

 だが、公共施設にはその概念はない。第二次大戦後の復興から立ち上がったわが国は、おそらく世界史上最速のスピードで公共施設を整備した国であろう。今その施設が一斉に老朽化している。その速度も間違いなく世界最速である。計画的に更新資金を確保しなければならない状態なのである。

 一般的に、公共施設には更新計画がないとすると、事態は非常に深刻である。確かに、博物館はなくても生きていけるかもしれない。だが、生命に直結する道路、橋梁、鉄道施設や、地中に潜って見えない上下水道などインフラはそうはいかない。橋が崩落する、上下水道管路が損傷し道路の陥没を引き起こすという”国土崩壊のシナリオ”は決して空想の出来事ではない。今、話題になっている道路財源の使途もこうした状況を勘案して検討されるべきであろう。

 第二は、ハコもの相互の用途転換である。築54年の博物館がある一方、まだ物理的には十分に使えるにもかかわらず低未利用になっている公共施設がある。少子化の影響で発生した廃校舎は身近な例であるし、合併により公共施設が遊休化する例も少なくない。愛媛県西条市は、合併前の自治体で町議会の議場や議員控室として使われていた空きスペースを図書館として活用することを決めた(10月26日官庁速報)。公共施設だからといって立派なハコが必要と決まっているわけではない。使えるものなら転用で十分である。

 更新投資も用途転換も、個々の縦割り部局ではなく、公共施設全体を時間的、空間的に見渡して利用戦略を立案する感覚が必要である。自治体にチーフ・アセット・マネージャーが必要な時期が到来しているのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)