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<2008年01月>進んだ公有資産有効活用と民間提案=2007年を回顧する

 今回は2007年の公民連携の回顧と題して1年を振り返ってみたい。

 07年の最大の動きは、自治体財政健全化法や資産債務改革など、自治体財政に民間原則を適用しようとする一連の制度改革であった。これらの改革は緒に就いたばかりであり、08年、09年に本格化することが見込まれている。市民が行政の実態を把握したうえで責任ある参加を促すという、地方自治制度始まって以来の大改革になると考えている。

 なぜ、市民参加になるのか。民間企業の財務諸表を見慣れた人には想像できるであろう。正しい情報が開示されれば、数字の背後にある企業の健全性や成長性を見抜き、発展や再生の可能性を評価することができる。地域も同じである。地域再生を論じるためには、まず情報が必要である。詳細かつ正確な公開情報があって初めて、的確で冷静な議論をすることができるようになる。自治体と企業は違うので解決すべき問題が多いことも事実だが、だからといって市民が理解できなくても良いということにはならない。株主である市民に分かりやすく情報を開示することは当然ではないだろうか。

 この中で、注目すべき指標が「売却可能資産」である。行政目的を達成し(あるいは達成が不可能となり)、もしくは当初から売却目的で取得して残っている資産が対象になる。今までの行政の発想は、手持ちの公有資産を必要な公共サービスに割り当てる発想だったと思う。必要な資産を考えることが優先されているため、不必要な資産の有効活用にはなかなか思いが至らない。

 筆者は、未利用の公共施設を用途転換し地域に新しい産業を興す家守(やもり)事業を推進しているが、再利用可能な施設がいくらでもあることを実感している。そういう意味では、売却可能資産よりも転用可能資産と位置づけ、賃貸(無償賃貸でも利用されることで経済効果を生じる場合は含める)も含めて資産を洗い出すべきである。

 07年11月、新潟県南魚沼市の合併自治体の議場にヤマト運輸のコールセンターが立地したのは、その典型である。地域にとっては議場という利用不能資産が活用されるだけでなく、最終的には200人の雇用を生み出すという成功事例であった(07年10月4日付オピニオン参照)。コールセンターは施設と人材さえあれば立地にはさほど依存しない。言い換えれば多くの地域にチャンスがあった。だが、それを実現したのは、議場を企業用途に転用するという劇的な発想の転換だったのである。

 既に、民間企業は、ぞうきんを絞るように資産管理を行っているが、行政には今までその発想がなかった。しかし、その分、再利用の余地は非常に大きいと言える。環境にも優しい未利用資産の有効活用が地域経済を支える日は案外近いかもしれない。

 資産活用に限らず民間のアイデアを誘導するための提案募集が各地で行われたのも07年の特徴である。全事務事業を対象に民営化提案を求めた千葉県我孫子市の例に続いて、東京都版市場化テスト提案募集や横浜市新庁舎候補地・手法提案募集が日本中の注目を集めた(07年5月7日付オピニオン参照)。他にも各地で同様の試みが行われた。それ自体は好ましいことであるが、より重要なことは、民の提案を真剣に検討することである。もし民の提案を受けることが面倒だという意識が自治体職員に微塵(みじん)でもあれば、その自治体はグローバルな競争には勝てない。提案は頭を下げて対価を支払ってでも入手すべき貴重な情報なのである。

 東洋大学では、民も提案を躊躇(ちゅうちょ)するケースを支援する地域再生支援プログラムを開始した。既に、社会人大学院生が自分の町の問題を持ち込んで協働で解決策を探している。こうした活動も、大学として地域再生に貢献するための地道ながら重要な一歩だと確信している。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)