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<2008年03月>サンデイ・スプリングスのキーワードはトータル・マネジメントとリスク移転

 東洋大学では、2月18日、米国ジョージア州サンデイ・スプリングス市関係者を招き国際シンポジウムを開催した(2月19日iJAMP)。同市は、「人口約9万9000人で、2005年12月の市制施行と同時に、警察と消防を除く市のほぼすべての業務を、大手建設会社の子会社に6年契約で委託。市長1人、議員6人、市職員4人」(同記事)で運営されている都市である。

 特に関心の高かった事項に関して解説があったので以下の通り整理しておこう。

  1. 民間企業への全面委託方式は、市を迅速に設立するために、住民代表委員会が決めた。日本的には“民営化”だが、市が資産を保有し税収から契約料を支払うためPPPと位置づけられている。
  2. 民間企業は公募され、全米有数の建設業者であるCH2M HILL社が選定された。スピーディかつ広範な対応能力が最高評価を得た。
  3. 市職員は4人で、シティ・マネジャー(2)、CFO(財務担当、1)、シティ・クラーク(契約・文書担当、1)。
  4. 新設市であるため、民間社員の多くは元々の自治体である郡および各地の自治体から採用された。米国では連邦法でアウトソーシングを理由とする解雇は禁止され、該当者は転籍、再訓練などの権利を有する。したがって既存の市でも十分に可能。
  5. 民間社員は135名。財政、歳入管理、人事管理、コールセンター、計画・ゾーニング、建築・開発、規制管理、交通計画、フィールドサービス、交通管理、公園・レクリエーション、広報その他などの業務に従事。許認可事項も含むが、あらかじめ決定された透明なルールに沿って実行するため公平性には問題ない。

 包括的な自治体運営の効果として、同規模の市の予算に比べて半分以下の予算規模になった。その結果、周辺の市の固定資産税率の半分以下になった。周辺地域住民にも同社に委託する動きが生じ、現在3市(約9万人)が同方式を採用。

 世界最先端の動きであったために、当日は自治体、建設、コンサルタントなど多くの分野から400人を超える聴衆が参加した。今回のシンポジウムやレセプションを通じて、我が国の将来のPPP(Public Private Partnership、公民連携)に関して大きな示唆を得ることができた。

 それは「トータル・マネジメント」の重要さである。同市の個々の業務は日本でいう業務委託にすぎないが、本市の特徴はそれを全事業に拡大したことである。発案者のオリバー・ポーター市監理委員会議長も「全面包括委託は3年前までは米国でも誰も信じなかった。だが、今は、トータル・マネジメントが民間企業のノウハウを最大限生かし、住民サービスを向上できる方法であると確信している。」と語っていた。国内の自治体関係者からは、すでに個別の委託を行っておりそれで十分であるということをしばしば耳にするが、それは官主導の部分的な委託に過ぎず、民の知恵を生かしたトータル・マネジメントはほとんど行われていない。

 一方、本市では、民間企業は運営業務を受託しているだけであり、既存資産の移動はもとより設備投資も行わない。新設市としてはある意味当然の選択であるが、今後展開される既存市では、運営業務を委託している事業者が、そのノウハウを生かして大規模修繕、更新投資、新規投資まで行う民間への「リスク移転」もありうるとの論点が示されたことは印象的だった。民の知恵の範囲をさらに広げるだけでなく、わが国の自治体が置かれているような財政逼迫状況では、資産売却による収入増も重要な選択肢だからである。

 いずれにせよ、「トータル・マネジメント」と「リスク移転」という二つのキーワードに、地域再生を進める多くのヒントが隠されていることは間違いないであろう。

 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)