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<2008年4月>緻密な検証と議論が必要―新銀行東京問題にみる地域金融の行方

 3月の注目の動きは新銀行東京である。「東京都議会は、経営難に陥っている新銀行東京に対する400億円の追加出資を盛りこんだ都の2008年度補正予算案を可決した」(3月28日iJAMP)。追加出資への批判はある意味当然であるが、本稿では、出資後の経営のあり方に絞って論じたい。全国共通の課題である地域中小企業向けの金融政策に対する重要な示唆を含むからである。

 ポイントはビジネスモデルである。現在、金融機関のビジネスモデルは、取引先に過度に関与せず取引ごとに採算性を確保するトランザクション・バンキング(TB)と、取引先との関係を重視し中長期的に採算を確保するリレーションシップ・バンキング(RB)に大別される。TBは世界で事業を展開するメガバンクなどが採用する規模のメリットが働くモデルである。RBは地域に密着した地域金融機関が得意なモデルである。

 新銀行東京は、地域の課題を解決するためにメガバンク同様のTBを採用した。新設銀行として地域との関係性が弱いために、あえて取引先との距離を置いたのであろう。他の金融機関にないこの構造こそが同行の長所であると同時に欠点でもある。成功すれば小規模な組織で効率的な金融が行えるはずであったが、結果として多大の損失が生じた。そうした可能性を最初から内在したハイリスク、ハイリターン型のモデルであり、そのこと自体を今論じても本稿の目的にかなわない。

 ここで、なぜリスクが現実のものとなったかを検討したい。このモデルの象徴は、財務データから統計的に融資の可否を判断するスコアリング融資である。メガバンクはもちろん地域金融機関も多く導入しているこの手法が、新銀行東京でどう使われたかによって原因と対策が異なってくる。

 まず、最も分かりやすいのは、スコアリングの結果では融資不可とされた案件に融資した、もしくはリスクを大幅に下回る金利で貸し付けたケースである。これではスコアリングの意味がない。経営陣ほかの責任者を刷新しルールを守る内部管理体制を構築しなければならない。

 次に、取引先の情報が不足している場合である。スコアリング融資には第三者でも入手可能な膨大なデータに、銀行が日常の関係から入手した個別情報を加味して精度を上げる必要がある。新設銀行として加味できる情報が不足しているなら、きめ細かな情報を加えて精度を高める必要がある。何が取引先の破綻(はたん)を招いた要因なのか、失敗データの冷静な解析が不可欠である。

 さらには、取引先から持ち込まれる情報に瑕疵(かし)がありそれを見抜けなかった場合である。金融は目利きの連続技である。専門性の高い職員が目の届く範囲で融資規模を絞って行く必要があろう。

 そもそも、地域の課題を市場原理で対応するというビジネスモデル自体が矛盾しているとの意見もあり得る。これが正解なら、銀行は清算するとともに追加出資分で補助金や信用保証のような直接的な対策を講じるべきこととなる。しかし、市場機能を活用しない金融は結果的に競争力のない企業を温存し、地域経済自体の活力を損ない財政負担を増やす弊害があり得ることを忘れてはならない。

 もちろん、他の理由も含めて複合的に影響しているであろう。いずれにせよ、理由のいかんによって取るべき対策が異なっていることは、緻密(ちみつ)な検証と議論が不可欠であることを意味する。追加出資はその時間的猶予を与えてくれているに過ぎないのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)