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<2008年5月>「インフラ大更新」時代の本格到来

 道路、公園、医療、福祉、介護、教育、歴史、文化、中小企業、観光…。政策的な支援のニーズには限りがない。限りある財源の中で多様なニーズをさばくのが政策であるが、それぞれに応援団がつき“必然性”を主張されれば優先順位を付すことも容易ではない。その結果、総花的な予算配分が政治的に最も安定的な解決策となってしまう。

 こうした事情とはかかわりなく、21世紀の財政を圧迫する最大の政策ニーズが存在する。それは老朽化したインフラの更新である。わが国は、第二次大戦前から戦中の戦時体制、戦後復興から高度成長期にかけて、人類史上最高のスピードでインフラを整備した。道路、橋梁、上下水道、学校、病院、庁舎、公民館、図書館、われわれを取り巻く多くの公共施設が次々に整備され、以前よりはるかに豊かな生活が実現した。だが永久に使い続けられるわけではない。数十年を経過した今これらのインフラが一斉に老朽化し、更新の時を待っている。

 インフラの一つ下水道は目に見えない。地中深く通った下水管の老朽化による破裂は、衛生面はもとより道路陥没という事態を招来しかねない。もちろん、下水道が使えなくなるということ自体、便利に慣れた住民にとっては大いなる打撃である。

 「東京都下水道局は2008年度、耐用年数の50年を超え老朽化している幹線下水管の本格改修に乗り出す」(4月25日iJAMP)方針だ。東京都の下水道は巨大な地下ネットワークである。「今後10年程度をかけて改修する予定で、総事業費は約1400億円になる見込み」(同上)とされている。だが、今回は特に老朽化の激しい部分の更新にすぎず、今後の更新投資圧力はさらに強まることが容易に予想される。

 一方、地上建築物にとっては、老朽化による更新に加えて耐震改修が大きな課題となる。直下型地震が相当の確率で予想される中、2006年に施行された改正耐震改修促進法では、生命の安全を守るために計画的な改修が求められている。

 市川市は、「市有建築物整備プログラムを策定。計画的に耐震化工事を実施していく」(4月23日iJAMP)予定だ。「6年間に必要な事業費は約100億円とみている」(同上)。これは、毎年1世帯約8000円の負担増に相当する。比較的財政状況の良好な同市ではともかく、財源不足に悩む自治体にとっては頭を抱え込む規模である。

 この中で最大とみられる施設が学校である。学校には生徒がおり、安全の確保は最優先で考えられなければならない。だが、生命の安全と予算の確保のジレンマを解決できず、必要性は分かっているが先送りせざるを得ないという地域があることも事実である。

 幸い、学校は住民にとって比較的便利な場所に立地し、まとまった面積を有した不動産だ。条件の良い廃校舎用地をマンションや商業用地として売却または賃貸することは、住民から見ればタブー視されやすいが、すべての施設を公共用途で残しつつ、耐震改修を早期に進める(かつ住民負担もせず、他の公共サービスの水準も下げない)ことは不可能である。

 手をこまねいている間に被災し貴重な人命が失われるという最悪の事態を回避するためにも、売却または賃貸により得られる収入を直接残存施設の耐震改修に充当するという、総合的なバランスを考えた経営手法が必要になっているのである。

 そうしたダイナミックな発想がなければ、上下水道や道路など不動産価値のないインフラの更新ニーズを満たすことは、さらにおぼつかないのではないだろうか。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)