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<2008年6月>急げ、地震に強い地域づくり

 5月7日のオピニオンで、「学校の耐震改修に手をこまねいている間に尊い人命が失われるような事態を避けるべき」(iJAMP)と提言した直後の12日、中国の四川省でマグニチュード8の大地震が起きた。本稿を執筆している29日正午現在、死亡者数6万8000人以上、行方不明者1万9000人以上、倒壊家屋540万戸超という甚大な被害をもたらした。亡くなられた方のご冥福を祈るとともに、すべての被災された方、そのご家族に心からお見舞いを申し上げたい。

 今回の地震は、その後も断続的に大型の余震が続くとともに、山間部の土砂崩れによって生まれた多数のせき止め湖が崩壊して洪水の危機が生じているなど、現在もなおまったく予断を許さない状況が続いている。中でも衝撃的なことが、7000校の学校が倒壊し多くの児童生徒が巻き込まれたことである。

 学校倒壊の原因について、「子供を亡くした父母らの間で『学校の手抜き工事の犠牲になった』と怒りの声が高まった」と報じられている(5月27日iJAMP)。実際、綿竹市では、父母が幹線道路を一時封鎖する抗議デモを行った。「中国政府は27日までに、被災地域の学校校舎について建築の質を調査することを決めた。安全基準を満たさない学校は使用を差し止め、責任者を処罰する」方針である(同)。原因はともかく耐震基準を満たさないことが被害を広げた大きな原因の一つであることは明らかである。

 前号でも触れたように、我が国の学校も耐震上大きな問題がある。手抜き工事はありえないとしても、実際に強い地震が到来すれば耐震強度の弱い多くの学校は倒壊するであろう。こうした危機感から、我が国でも学校の耐震性強化の議論が急に高まった。

 「自民、公明、民主の3党は、公立小中学校の耐震補強工事に関する国庫補助率を現行2分の1から3分の2に引き上げることで大筋合意した。地方交付税措置を拡充することと組み合わせ、自治体の負担を現行3割程度から1割程度に軽減する方向で調整を進める」検討が進んでいる(5月28日iJAMP)。これにより、耐震化の遅れている「約4万5000棟(35%)」(同)を早急に補強することになる。

 自治体財政に耐震改修に振り向ける十分な財源がない以上、国全体の仕組みの中で補てんすることは当然であろう。だが、これですべてが解決する訳ではない。耐震補強は学校だけに求められるものではないからである。庁舎、公民館、図書館、あるいは道路、橋梁、上下水道など、すべてのインフラや施設に関して、必要な補強や老朽化による更新にはいくらかかるのか、その試算はされたのであろうか。こうした施設のすべてを国費で負担することは、少なくとも短期的には無理である。

 学校を最優先にすることは認められてしかるべきである。だが、学校だけを緊急避難的に扱うことで、他の分野の補強がおろそかになって良いわけではない。庁舎が倒壊すれば職員も市民も被災する、道路の陥没や橋梁の崩落は多くの人命の危機をはらんでいる。上下水道や電力、ガスのライフラインは被災後の復旧を大幅に遅らせる。

 こうした補強すべてを国に依存することは持続的な方法ではない。自分たちの地域はまず自分たちで安全を確保する姿勢が必要ではないだろうか。この観点から、前号では、条件の良い廃校舎用地をマンションや商業用地として売却または賃貸することにより、自ら財源を調達して補強を早める方策を提案した。都市部であれば、1校分で数億円から数十億円の自主財源を得ることができる。この財源を、学校ほかの緊急を要する施設の補強(あるいは上記1割の自治体負担)に充当すればよい。ともすればタブー視されがちな「資産の売却」は地震に強い地域づくりのためにも必須の選択肢なのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)