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<2008年7月>「公共サービスのプライオリティ付け」は不可欠

 前月の本欄で、学校校舎に対する耐震補強工事への国の補助が拡充されることを伝えた後、改正地震防災対策特別措置法が施行された。同法は、「公立小中学校などの耐震補強工事に対する国庫補助率を従来の2分の1から3分の2に引き上げる」とともに、「地方交付税措置を拡充。これらの措置により、耐震補強工事に掛かる自治体の実質的な負担は30%程度から約10%まで軽減される」措置である(6月20日iJAMP)。四川大地震により現実化した被災リスクに対応するものであり、与野党一致の迅速な対応に拍手を送りたい。

 だが、問題もある。そもそも「全国の公立小中学校の校舎や体育館のうち、震度6強以上の地震でも倒壊の危険性が低い建物の割合(耐震化率)は62.3%」にとどまっていることである(同日iJAMP)。「耐震化率は、神奈川(90.4%)、三重(86.5%)、静岡(86.4%)が高く、長崎(39.0%)、山口(46.1%)、茨城(46.5%)で低かった」(同日iJAMP)と大きな地域差も指摘されている。

 先日話を聞いた神奈川県のある市は、耐震改修を最重点に位置づけ費用の3割を自己負担して、既に完了している。同様の自治体は少なくないはずである。この間、遅れている自治体は何をしていたのだろうか。すべての支出は耐震改修よりも重要だったと言い切れるのだろうか。財政の厳しさはどこも同様である。耐震化率の低い自治体は、なぜ耐震化に高いプライオリティーを与えられなかったかを検証するとともに、1割の自己負担分を速やかに捻出(ねんしゅつ)することが必要である。本欄で以前から提案している条件有利な立地の廃校舎跡地の売却も含めて、すべての方法を考えるべきである。そうでなければ、責任ある自治体経営は成り立たない。

 6月24日、大阪府は、2008年度一般会計本格予算案を発表した。「予算規模は前年度当初比10.2%減の2兆9226億1500万円。1100億円の収支改善を目指す財政再建案を反映させた結果、予算規模は8年ぶりに3兆円割れとなった」(6月25日iJAMP)。橋下知事が就任したのは本年2月。翌年度がはじまる直前の就任で、従来路線の延長線上の予算案とすることもできたかもしれないが、あえて4カ月の暫定予算を組んだ上で、公約に基づく思い切った予算案を作成したことは高く評価したい。

 予算案(およびその前提となっている財政再建プログラム案)に対する批判が多いことは事実である。だが、今の財政状況ですべての政策ニーズに応えることはできないし、仮に妥協を続ければ財政破綻(はたん)の危機に直面しかねない。学校の耐震補強には国は大きく乗り出したが、自治体本体の財政再生には、職員給与も公共サービスも大幅にカットする厳しい未来が待っている。それは夕張市の現状を見れば明らかである。その前提で、府民や議会は、自分の支持する分野への支出維持を優先するのではなく、財政再建による長期的な公共の福祉の観点から、ニーズにプライオリティーを付けるべきである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)