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<2008年8月>施設の相互利用は自治体外交

 一つの自治体で、すべての公共施設や公共サービスをまかなう必要はない。現実に、今でも、一部事務組合や広域連合を用いて、斎場やし尿処理施設などいわゆる迷惑施設の整備や、医療・介護などのサービスの提供が複数の自治体間で行われている。

 だが、博物館や図書館などの文化施設、学校や病院、庁舎などは、基本的には自前で建設しサービスも提供する。自分の地域の需要を超えた大規模な施設でも、住民ニーズがあるから作らざるをないと考えたことはないだろうか。だが、完成した途端に重い負担が生じ、いずれは財政の逼迫(ひっぱく)を招く。結果的に将来の住民に負の遺産を残す。必要な機能は必要だと認めた上で複数の自治体間で施設やサービスを分担するのが広域連携である。単に仲良くするのではなく、互いの不足を補い得意技を交換する。両者の交渉でリスクとリターンの分担を設計するPPP(公民連携)の原理を活用した官と官の連携は、広域連携というよりも“自治体外交”と呼ぶのが適当だと思う。

 さて、つい先日、橋下徹大阪府知事が平松邦夫大阪市長に大胆な“自治体外交”の提案を行った。「大阪市の第三セクターが所有する大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)に府庁を移転させる案」である。「府庁本館は1926年に完成。老朽化が進み、震度6強以上で倒壊する恐れがある。」、「WTCは55階建てで95年に完成。バブル崩壊の影響でテナントが集まらず経営破綻(はたん)し、処理策の検討を進めている」とされている。(8月5日iJAMP)

 詳細は明らかではないが、大阪府は現府庁舎をWTCに買い換えることで比較的安い費用で耐震性の高い庁舎を入手できる。一方、大阪市は市の財政にのしかかった大きな負の遺産を処理することができる。双方にメリットがある。さまざまな困難は予測されるものの、実にダイナミックな経営戦略である。

 大阪府・大阪市は、すでに、両者の水道事業を統合することで基本的に合意し、今後、検証委員会を設置して具体的な検討を行う予定となっている(7月23日iJAMP)。住民にとって重要なのはサービスの内容であり、誰が提供するかは二の次である。最も内容に優れ、かつ費用の節約できる方策があれば、従来の常識にとらわれる必要はない。大阪府と大阪市の取り組みは、そうした新しい自治体のあり方を示唆している。

 残念ながら、こうした意味での自治体外交の例はまだまだ少ないが、最近のiJAMPでは

 ・医師不足と財源不足を解消するため、静岡県の掛川市と袋井市が両市の市立病院の統合を目指す例(2007年12月11日)

・熊本県長洲町が学校給食業務を隣接する荒尾市に委託する例(2008年3月7日)

 ・福岡県が福岡、北九州両市を除く県内市町村との共同公文書館を建設する例(同5月8日)
 が報告されている。

 この動きは民間企業に例えると分かりやすい。技術提携、共同販売会社の設立、一部門譲渡など企業と企業の取引が経済紙の一面を飾らない日はない。こうした多くの連携の検討の結果、すべての側面で共同することが合理的となれば、はじめて合併という選択肢が浮上する。

 自治体も同様である。合併するかしないかという究極の二者択一ではなく、困っている課題を解決できる相手を、近隣市町村、都道府県、遠隔自治体などさまざまな候補の中から選ぶことができるのである。読者の抱える課題の一部は、こうした自治体外交の発想を取り込むことで解決される可能性がある。ぜひ、選択肢の一つに入れていただきたいと思う。PPP(公民連携)の理論は“自治体外交”の展開にも大きな力を発揮する。

 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)