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<2008年10月>構造改革と景気対策の同時実現のために

 麻生政権が誕生し、構造改革路線から景気重視路線への転換が明確になっている。景気対策の主要な内容が公共投資の上積みであるとすれば、地域の企業に仕事が回り疲弊した経済のカンフル剤になることは間違いない。瀕死(ひんし)の状態にあえいでいる状態では体力強化ではなくカンフル剤が必要であることも正論である。

 だが、ニーズに合わない公共投資は結局使われない。国の支援が行われるとしても初期投資のみであり、維持費、運営費、更新費負担で将来世代がその負担にあえぐことになるのである。筆者は複数の自治体の施設整備のアドバイザーを行っているが、比較的余裕があると見られる自治体ですら、過去の投資の維持や更新負担が厳しく、新規投資に割く余裕がなくなるほどの状況にある。収入増加策を実施しつつも、確保可能な収入の範囲に財政支出を制御していく姿勢は不可欠である。これは自治体経営そのものであり、路線のいかんを問わず本来必要なものである。

 自治体経営の観点からも是認される景気対策が唯一存在する。それは老朽化したインフラの更新速度を早めることである。本稿でもたびたび指摘しているように、今、日本ではインフラ更新期が一斉に到来している。道路の陥没や橋梁の落下は海外の話ではない。庁舎や学校の倒壊も決して心配しすぎではないのである。民間企業と異なり十分な引き当てを行っていない自治体は、安全なサービスの維持のために、大規模な更新需要にいかに対応するかを真剣に検討せねばならない。

 通常の政治プロセスでは新しい投資の方が受け入れられやすい。この政治的幻想の繰り返しが、老朽インフラ更新の必要性に着目する契機を失わせた。だが、道路、橋梁、上下水道、学校、病院、庁舎などの施設の老朽化の情報が開示され、住民の安全や安心を守る公共施設の基本的な安全性を優先することを訴えれば十分に合意が得られるのではないか。

 一方、財源としては、資産の民間への売却・賃貸などの抜本的な確保策が必要である。本来公共施設の安全性の確保や更新期への対応を考えるのは資産保有者の責任である。資産を有効に管理してきていないにもかかわらず、国の負担、つまり国民の負担を一方的に要望するのは筋違いである。

 先月29日、東洋大学で第3回日米PPPフォーラムを開催した。今回の話の中で最も注目を集めたのが米国バージニア州法のPPEA (Public Private Educational Facilities and Infrastructure Act)である。これは民間企業が公共投資を自由に提案できる制度である。低利用の公有地で民間プロジェクトを行うことで得られる利益を財源に、無償または大幅に割安な費用で公共施設を建設した事例が取り上げられていた。学校、病院、上下水道、交通、情報、庁舎、刑務所など現在わが国が抱えている多くの分野で既に適用実績があるという。公有資産の有効活用、民間ビジネス機会の拡大、地元雇用の増加、公共投資の効率化などの効果が複合的に生じている。その源泉が民間の自由提案なのである。

 わが国の自治体でも、景気対策と並行して、老朽インフラ更新を目的にした自由提案制度を導入すれば良い。地方圏でも駅前の一等地に低利用の公共施設が残されている例は少なくない。民の技術や資金調達の知恵も活用可能であり、維持補修改修投資であれば地元事業者にも必然的に仕事が回っていく。民の自由提案による老朽インフラ更新で、構造改革と景気対策を同時に実現することを強く提言したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)