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<2008年12月>公立病院改革の視点

 公立病院の経営問題は、地域をめぐる大きな課題の一つである。「医師不足と市の財政難により休止された」銚子市立総合病院の例は記憶に新しい。

 11月もいくつかの動きがあった。宮崎県小林市、高原町、野尻町は4月以来続いていた合併協議を休止した。理由は、小林市、高原町の双方にある「公立病院の取り扱いに関する3者の意見が折り合わなかったため」である(11月17日官庁速報)。公立病院の経営のあり方は、市町村合併の成否をも左右する大きな要素となっているのである。

 これとは逆の注目すべき動きもあった。「徳島県のつるぎ町立半田病院、三好市国民健康保険市立三野病院、県立三好病院の公立3病院は、連携・協力体制の確立に向けた協定を締結した」ことである(11月12日官庁速報)。「医師不足を相互に補完するため、患者の紹介や医師の派遣などを行うもの」で、全国でも非常に珍しい公立病院間の連携である(同)。

 膨大な設備費と人件費を固定的に抱えざるをえない公立病院を、厳しい財政事情と人口減少の中で、単独自治体で維持し続けることは並大抵のことではない。一般会計も負担に耐え切れなくなって医療サービス停止という最悪のシナリオに至ることを回避するための知恵の一つとして、複数病院の経営資源共有は大いに参考になる。

 この試みは、米国で現在注目されているシェアードサービスに通じるものである。シェアードサービスとは、異なる自治体間の公共サービスを、一つの共用オフィスから提供する方法である。完全PPP(公民連携)都市として名高いジョージア州サンディ・スプリングス市を受託したCH2MHill OMI社が、周辺3市を含めて人員や設備を共用することにより、さらに効率性を引き上げていることから一躍注目されている。

 シェアードサービスは、合併と異なり、地域の名前やそれに付随する文化・歴史をそのまま残した上で、サービスの生産性だけを高めることができる手法である。資源共用は一部事務組合や広域連合でも可能であるが、シェアードサービスでは民間委託と組み合わせることで、生産性向上に民の知恵を入れることができる。

 地域医療の持続性の観点で注目されているプロジェクトに、経営的に苦況に陥っている近江八幡市立総合医療センターがある。PFI(民間資金活用による社会資本整備)を活用した同センターについて、市が設置した検討委員会が本年はじめに発表した報告書は、一因を手法としてのPFIに求め、「PFIの契約条件や金額の大幅な見直し、又は契約の一部解除」も視野に入れて検討すべきとしており、一部では実際にその動きに着手したとの新聞報道も最近なされている。

 だが、この判断には致命的な欠陥がある。報告書では、資金不足の原因を、(1)旧病院跡地の売却の先送り(2)病院の新築のための内部留保不足(3)当初の収入計画が現実に比べて“相当高い水準”であり結果的に未達となったことなどとしている。

 しかし、原因とされている点はすべて市自らの行動に起因している。市という主体に問題がある以上、PFIという手法だけを見直しても問題は解決しない。いわんや、原因発生に責任のない契約の相手方であるSPC(特定目的会社)に負担を強いるのはまったくの筋違いである。公立病院という負担の大きな投資を決定した責任者として、どう収拾していくのか。後世に恥じない解決を期待したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)