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<2009年1月>病院PFI契約解除に異議あり

 前号(昨年12月1日iJAMPオピニオン)で「公立病院改革の視点」を取り上げた後、年末も押し詰まって大きなニュースが飛び込んだ。滋賀県の近江八幡市立総合医療センターをめぐり、同市と同センターを運営する特別目的会社(SPC)「PFI近江八幡」が12月25日に解約合意書に調印、市は本年4月から同センターを直営とすることとなった出来事である。市は、SPCに対して、施設の買い取りと補償金の支払いを行う。本件は、SPCの経営破綻以外の理由による初のPFI契約解除の事例である。

 残念ながら、本稿執筆時点で市HPには情報が開示されていないため市の公式の判断は不明である。だが、市が設置した検討委員会が昨年はじめに発表した報告書では、一因を手法としてのPFI(民間資金活用による社会資本整備)に求め、「PFIの契約条件や金額の大幅な見直し、又は契約の一部解除」も視野に入れて検討するよう求めていた。実際、12月上旬に、あるテレビのインタビューに答えた冨士谷英正市長は「公営の時は黒字だったのに、民間に任せたら赤字になった」との趣旨で語っていた。少なくとも、交渉の途中までは、PFIが原因で経営が悪化したため契約解除するとのスタンスをとっていたのではないか。

 この認識はまったくの誤りである。赤字の理由は、老朽施設を建て替えて固定費支出が大幅に増大したにもかかわらず、それに見合う収入が得られないという過剰投資にある。さらに、その責任は、(1)病院新設を決定し(2)収支が償わない構造の原因として指摘されている高度で大規模な仕様を決め(3)大幅な収入増を織り込んだ収支計画を策定した市自身にある。今回補償金を支払うということは、解約が市の事情によるものでSPCやPFIは無関係であることを認めたことに他ならない。

 さて、今後どうすべきか。言うまでもなく、赤字とは、収入(需要量×単価)<支出の状態であり、その解消には、(1)需要量を増やす(2)単価を引き上げる(3)支出を圧縮するの三つの方法を組み合わせる必要がある。経営的観点からだけから言えば、この意味するところは、(1)近江八幡市だけでなく県内他地域・京都を含む広域圏からの利用を増加させる(2)健診・ドック等の比重を高めるなどの方策である。(3)の支出圧縮は、高度・大規模な仕様の施設を作ってしまった時点で既に支出構造が確定しており、今回の措置で金利負担は減少するものの多額の負債を抱えた財務体質は変わらない。だが、収入に見合う程度に減価した上で第三者に譲渡することで、損失を確定させ将来負担から解放されるという方
法もありえなくはない。民間であればすべてを選択肢に入れて検討するだろう。

 もし、これらの方法が市民のための医療政策の観点から不可とするなら、近江八幡市民自身が負担するしかない。だが、経営的手法で少しでも改善しようとするなら、柔軟な経営能力が不可欠だ。これは、まさにPFI導入時に期待したものではないか。今回、直営に戻すことで経営上の課題を解決する成算は本当にあるのだろうか。経営問題の本質を分析せずに解約自体を目的として走った結果、二度目の失敗を繰り返そうとしていると言わざるを得ない。契約解除を見直すことは、今からでも決して遅くはないのではないだろうか。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)