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<2009年2月>「施設白書」の策定で、市民に政策選択の判断材料を

 「2兆円の定額給付金を盛り込んだ2008年度第2次補正予算は27日夕、衆参両院協議会を経て、憲法の衆院優越規定により成立した」。

 多くの議論を呼んだ給付金の議論の中で注目したい発言の一つが、橋下徹大阪府知事の「学校の耐震化」に使うというものだった。「給付金は法律で個人支給と定めており、耐震化に回すのは難しい」(同)との指摘もあったためか、その後、記者会見で「府民から寄付を募り、小中学校が海外の学校と交流する際に使うパソコンやカメラを配備する費用に充てる」との構想も明らかにしている。

 児童・生徒の生命の安全を実現する耐震化の遅れは放置できないし地場の建設業者の仕事にもなる、また、パソコンやカメラは教育現場における情報化を進め未来への投資となるとの認識であろう。貴重な資金の選択と集中に対して、リーダーとしての明確なビジョンとその理由を示している点を高く評価したい。ぜひ大いに議論してもらいたい。

 さて、学校に限らず、老朽化した公共施設はすでに更新期が到来している。周辺住民としては、そのままの形で維持する、あるいは更新の機会に大規模化かつ質も高くしてほしいと要望するかもしれないが、単純にそれらの要望をすべて満たすことは財政制約上難しい。無理すれば、財政的に維持できなくなり、結局はもとのサービスすら提供できなくなるおそれがある。選択と集中が必要である。

 選択と集中を進めるためには、公共施設について、その利用状況や運営コストなどを施設ごとに示し、今後の公有財産の効率的な運営や政策判断に役立てる「施設白書」が有効である。例えば、図書館新設計画があるとする。情報がない状態であれば図書館はあった方が良いと思うのが普通だろう。だが、施設白書で、図書館の維持運営には貸出件数あたり1700円(ある市の例)必要という情報が開示されたらどうだろうか。

 多くの市民は考え込むだろう。図書館ではなく地元の書店でのみ使える図書券(バウチャー)を配付する(そうすれば多くの本を買える)、その財源を福祉や医療に回す、その分減税する、逆に利用を大幅に増やすようにする案もある。もちろん、本に囲まれた空間自体が貴重だと考えれば他の公共施設に比べても費用対効果は低くないと思う市民もいるだろう。いずれにせよ、多くの選択肢の中から議論することができるようになる。

 この点で、神奈川県藤沢市の最新の公共施設マネジメント白書がもっとも注目される。施設ごとの利用状況、行政コスト情報、老朽化・更新需要、成果指標が詳細に表示されていることに加えて、地区ごとに施設の配置と費用対効果の状況を視覚的に判断できる整理を行っている。維持すべき施設と廃止すべき施設の峻別(しゅんべつ)、学校の空き教室など低利用のスペースを用いた複合化、類似施設の統廃合、あるいは近隣自治体との共同利用、公共施設の集中投資や空白地域への公共サービスの提供のあり方などの具体的な戦略がおのずと浮かび上がってくるはずだ。

 そうすれば、地域経営のための責任ある議論が起きる。これが本当の意味での市民参加であり、その前提として、詳細な施設白書の作成と市民への積極的な開示が必要なのである。もちろん、普及啓蒙のためわれわれ教育機関が果たすべき役割は限りなく大きいことは言うまでもない。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)