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<2009年04月>民間金融機関による公的金融サービスの実現を

 東洋大学はPPP研究センターを開設した。同センターは、文部科学省私立大学戦略的研究拠点整備事業の認定を受けて設立された「わが国で唯一となる公民連携(パブリック・プライベート・パートナーシップ、PPP)の専門研究機関」である。

 開設記念の国際シンポジウムの基調講演者として招待された米国ジョージア工科大学ジェームス・ホワイト教授は、ジョージア州サンディ・スプリングス市ほかで進んでいる公共サービス包括民間委託方式をテーマに、「政府における革新:伝統型システムとPPPモデルの比較」と題して講演した。

 伝統型システムでは、自治体が、公共サービスの内容や量を決定するとともに、自ら実際に供給する。だが、PPPモデルでは、政策決定主体と供給主体が分離され、複数の潜在的供給者の中から、費用対効果やスピードなどを基準に最適の形態を選ぶ。

 サンディ・スプリングス市では、ほぼ100%民間に委託しているが、コロラド州センテニアル市は、市政を3分割して、自営(公務員型)、郡(上位自治体)からのサービス購入、包括民間委託を組み合わせたハイブリッド型経営を行っている。いずれにせよ、受けるサービスこそが重要で誰が提供するかは別の問題であり、民間が生産する公的サービスが優れていれば、それを購入して良いではないかというきわめて合理的な発想が根底にある。

 自治体経営のPPPモデルが日本でも有効でありうることは、本コーナーでもたびたび指摘してきたが、今回はまったく次元の異なるテーマへの応用を考察してみたい。金融危機後の企業資金対策である。

 周知の通り、金融危機後の企業の経営危機は、震源地の米国はもとより日本経済にも暗い影を落としている。将来の持続可能性はあっても短期的な資金繰りが逼迫(ひっぱく)している企業は少なくない。世界のトヨタですら大幅な赤字に転落する経済情勢では、政府の関与は不可欠である。

 日本では、この問題に対して、日本政策投資銀行を活用する方向で検討が進んでいる。自民党の国際金融危機対応プロジェクトチーム(座長・柳沢伯夫元金融担当相)は、3月31日、市場安定化策をまとめ、中堅・大企業向けの融資拡充を目的とした日本政策投資銀行への追加出資を盛り込んだ。(3月31日iJAMP)。

 同行は企業金融の政府系金融機関として活動してきたため、そのノウハウの発揮が期待されたのである。だが、周知の通り、同行は昨年10月民営化されている。民営化した機関に担当させるべきでない、そもそも民営化すべきではないなどのさまざまな意見があると思う。

 官か民かの単純な二分論ではそうかもしれない。だが、もう一つ選択肢がある。民間金融機関である同行が公的金融サービスを生産し、政府が、出資という手段で対価を支払ってそれを購入する方式、すなわち前述のPPPモデルである。企業金融に対するノウハウが公的金融機関には薄い一方、民間金融機関にはあるのであれば、必然的にPPPの選択肢が浮上する。もちろん、この方式は、メガバンクや地域金融機関にも適用できるはずだ。ぜひ、金融危機対応に名乗りを上げ、積極的に日本経済の立ち直りに貢献していただきたい。また、政投銀には”公的金融サービスの得意な民間金融機関”としての新しいビジネスモデルを切り開いてもらいたい。

 ところで、金融危機震源地の米国はどうだろうか。政府は大企業の資金繰りを支援する政策実現ツールを持たず、政府や中央銀行のマクロ的な政策では個別企業の問題にまで迅速に踏み込むことができない。その結果、ビッグスリーなど個別企業の救済には個別に対処するしかなくなり、意志決定に長い時間を要することになった。

 自治体の公共サービスの改革には見事なPPPモデルを提示した米国も、この問題に対しては後手に回っていると言わざるを得ない。民による公的金融サービスのPPPモデルで世界をリードするのはわが国かもしれない。 
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)