1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2009年05月>補正予算を機に新スマート・インフラの整備推進を

<2009年05月>補正予算を機に新スマート・インフラの整備推進を

 大型連休が終わり、2009年度補正予算の議論が本格化する。「衆院予算委員会は30日、理事会を開き、2009年度補正予算案の審議日程について、与党側が5月12日の締めくくり質疑と採決を提案した」。一方、「民主党の菅直人代表代行は30日の記者会見で、『内容を精査する限り、とても賢い支出とは言えず、愚かな支出になっている』と改めて批判した」(同)。いずれにせよ、次世代に過大な負担を先送りしないような費用対効果の高い失業対策や企業の資金繰り対策があるなら、ぜひ進めてもらいたいというのが国民共通の要望であろう。

 この観点から、新スマート・インフラの整備推進を提唱したいと思う。本コーナーでもたびたび指摘している通り、わが国の社会資本(インフラ)は戦後復興から高度成長期に急激に整備された。今、それらのインフラが一斉に老朽化している。このまま放置すれば将来確実に使えなくなる。上下水道のパイプは壊れ、道路に穴が開き、橋や公共施設が倒壊するという事態は決して非現実的なものではない。

 従って、インフラの更新は多くの人に賛同してもらえると思う。だが、単純に更新する財源はない。民間企業と異なり、インフラ更新の資金は十分に積み立てられてきていないからである。資金不足のため、老朽化した学校校舎や庁舎の更新に着手できていない例は身の回りにいくらでも存在する。上下水道、廃棄物処理、道路・橋梁・交通、図書館・病院等の公共施設等々、さらには農地や国土の保全にも同じ議論が成立する。

 どうすべきか。そもそも、人口減少時代に既存のインフラをすべてそのまま更新しなければならない理由はない。地域の戦略に応じて、安全安心、少子高齢化対応などインフラの優先分野を定めるとともに、それ以外の部分は思い切って我慢する。選択と集中である。不必要な資産はできるだけ売却、賃貸し、必要分野に振り向ける財源にする。優先分野でも、費用対効果が最大化するような技術や手法を導入する。複数の用途に使える場合は複合利用する。

 このように知恵を最大限絞って、できるだけ軽い負担でインフラを整備することは「新スマート・インフラ」と呼べると思う。「新」をつけたのは、もともと、情報通信と交通関連の社会資本を統合的に計画・整備・運営することにより構築される効率的なインフラ整備を指す言葉としてスマート・インフラという用語が用いられているためである。その精神を引き継いで、両分野以外も含めたすべての知恵を集めるという意味で、「新」をつけて表現した。新スマート・インフラは、以下の理由から、経済対策として有効であると考えられる。

 第1に、インフラの性格上、特定の地域に限定されるものではない。大都市圏はもとより、地方都市、農村・山林を含めて全国津々浦々に経済効果を浸透させることができる。

 第2に、優先度の高い支出はいずれ必要となる支出であるため、次世代からみた不公平感が比較的少ない。(もちろん、現世代が優先度の低い他の支出を抑制して早目にインフラ更新に着手していれば後世代の負担もその分少なくなったはずなので、完全に公平という訳ではないが)。

 第3に、地元の企業の資金繰り対策および雇用対策になる。新スマート・インフラ整備には、現在、最も苦境に陥っている業界である建設、コンサルタント、不動産、金融、機械などの専門家が必要である。きめ細かな工夫が要求されるため、地元の建設会社、工務店、水道事業者などの仕事となり、雇用が創出されるのである。

 国会の議論だけでなく、地方の経済対策の実際の担い手である自治体が、新スマート・インフラの重要性を認識し積極的に施策として取り組むことを期待したい。 
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)