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<2009年07月>「かんぽの宿」問題、政局に左右されない冷静な議論が必要

 「佐藤勉総務相は6月29日、日本郵政の西川善文社長と会い、西川社長ら取締役9人全員の再任に関する認可書を交付した。これにより、鳩山邦夫前総務相の辞任にまで発展した社長続投問題が最終的に決着」。1民間企業の資産売却にすぎない問題が、なぜ、内閣支持率へマイナスの影響を及ぼし、政局の転換点とも言うべき大きな出来事になったのか。この機会に、冷静を振り返ってみたい。

 ◎日本郵政をめぐる主な動き
           【2008年】

 12月26日 日本郵政がかんぽの宿70施設などをオリックス不動産に一括譲渡することで合意
【2009年】
 1月 6日 鳩山総務相がかんぽの宿譲渡に異議、契約見直しを要求
 2月 4日 鳩山総務相が日本郵政に入札経緯などの報告命令
 4月 3日 鳩山総務相が日本郵政に業務改善命令
 5月 8日 鳩山総務相が衆院予算委で西川社長への辞任要求を示唆
 5月18日 日本郵政指名委員会が西川社長の続投方針を決定
 5月29日 日本郵政の不動産売却等に関する第三者検討委員会が報告書を提出
 6月 5日 鳩山総務相が認可権限を行使して西川社長の続投を拒否すると言明
 6月12日 麻生首相が西川社長の続投を決断、鳩山氏が総務相辞任
 6月24日 日本郵政の西川社長は佐藤勉総務相に業務改善計画を提出
 6月29日 佐藤総務相が西川社長ら取締役の再任に関する許可書を交付
(肩書は当時)
 鳩山前総務相は、当初、「オリックスの宮内会長は規制改革会議の議長をやり、郵政民営化の議論もそこでされた。そこに一括譲渡となると、国民ができレースではないかと受け取る可能性がある」(1月6日iJAMP)として、利害関係者の関与や一括譲渡が問題と指摘していた。

 利害関係者を入札手続きから形式的に排除することは当然だが、日本郵政の経営に権限を有さず、個人の資格で参加した過去の審議会の座長履歴にまでさかのぼって利害関係者とするのは無理である。また、一括譲渡も、価値の低い不動産の処分およびその施設の職員の雇用維持などを考えれば決して不合理ではない。つまり、当初の指摘は必ずしも的を射たものではなかった。

 しかし、鳩山前総務相は、その後、(1)資産譲渡手続きの透明性・公平性の欠如に焦点を移し、さらには、(2)これらの欠如を生じさせた経営のガバナンスの不在、ひいては、(3)そのトップたる西川社長の責任追及へと矛先を変えたように見受けられる。

 これに対して、日本郵政は、社内調査および第三者検討委員会報告を受けて6月24日に以下を骨子とする業務改善計画を総務省に提出した(6月24日iJAMP)。

 承継した不動産は国民共有の財産で公正・透明な手続きが必要なのに整備していなかった
 意思決定時の選択肢の比較考量、選定過程の記録が不十分だった
 経営層への情報提供が十分ではなかった
 注目すべきは、「国民共有の財産」という表現である。この意味は必ずしも明確でないが、“かんぽの宿は日本郵政自身の経営努力ではなく、郵政民営化という国が定めた枠組みによって取得したものであり、処分する場合は公有資産同様に透明かつ公平になされるべき”という意味であれば、国民から見ればきわめて自然な判断である。

 この認識が共通しているならば、鳩山前総務相と大きな相違はなかったと言えるだろう。とすれば、郵政民営化の是非や民営化企業への政府の関与の在り方、ましてや政局への影響という政治的な議論が出るまでもなく、責任の取り方も含めてもう少し冷静に議論できたのではないだろうか。少なくとも、多くの国民にとっては十分理解できないままに決着した感は否めない。

 一般的に、公有資産処分では、他の公民連携と同様に、公益を害しないよう処分先が公募されるので、その実質的な妥当性は、募集要項を検証することで容易に判断できる。原資産の情報開示度、入札資格者の制限度、処分方法採用理由の明確性、落札者選定基準の合理性・明確性、入札期間・応募方法の合理性、最終的な意思決定システムの明確性などである。

 残念ながら、今回、募集要項はHPに掲載されておらず検証できる状態になかった。「国民共有の財産」であるならば、妥当性を国民の視線でも検証できるように、募集要項を広く開示すべきだったであろう。今回の顛末(てんまつ)で一番欠けていたのは、国民への配慮だったのではないだろうか。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)