1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2009年08月>公民連携の観点からマニフェストを検証する

<2009年08月>公民連携の観点からマニフェストを検証する

 衆院選の投開票日が8月30日と決まり、各党の公約も出そろった。前回の郵政選挙のような単一の政策ではなく、子育て・教育、年金制度、地方分権など総合的な政策の優劣を競うという日本の歴史上初めての経験となる。

 さまざまな論点の中で、特に、注目を集めているのが財源問題である。票を得るために耳当たりの良いばらまきに走っているわけではないということを示すために、財源の裏打ちの説明責任は非常に大きい。

 この点に関する自民党と民主党の公約の書き方は非常に異なっている。

 「民主党が掲げる政策を完全実施するためには、2013年度に16.8兆円の財源が必要。無駄の排除などで財源をねん出するとしている。一方、自民党は経済状況の好転後に消費税引き上げを含む抜本的な税制改革を実施する方針を示し、責任政党をアピール。ただ、具体的な引き上げ幅や実施時期は明記しなかった。」(7月30日iJAMP)。

 まず、民主党は、子ども手当の創設などで13度に必要となる16.8兆円の所要額の54%に相当する9.1兆円を、「国の総予算207兆円を徹底的に効率化。ムダづかい、不要不急な事業を根絶する。」(同党マニフェスト)で捻出(ねんしゅつ)するとしている。これに対して、麻生首相は、「『財源(の裏付け)が無責任で極めてあいまいだ』と厳しく批判した」(7月27日iJAMP)。

 確かに、無駄遣いの恐れがある項目としてマニフェストに明示されているのはメディア芸術総合センター建設(117億円)、官公庁の施設整備(2兆9000億円)、天下り法人への基金(7000億円)、農地集積事業(3000億円)であり、総額には大きく足りない。仮に、例示以外に、無駄遣いがあることを示せなければ5兆円以上の財源が不足することになる。

 ところが、一方の自民党の公約には数字が示されていない。「景気回復後の消費税増税で賄うことを想定。ただ、引き上げの時期や幅には触れておらず、当分の間は歳出削減か国債発行で対応する方針」(7月31日iJAMP)と伝えられている。数字以前に具体性がない。公務員数と議員定数削減は言及されているが、金額的には一部に過ぎないだろう。一国民としては、このままでは、政府支出の合理性が問われることなく増税という形で国民に負担が転嫁されるかもしれないという恐怖心を抱かざるを得ない。

 以上の通り、双方とも今の公約では不足している。互いに批判している場合ではなく、政府の無駄をどのようにして排除するのか、国民にもっと説明するべきである。

 では、どのようにすれば無駄は減らせるか。実は、無駄遣いをなくすことが難しいのは、使っている当事者から具体的な情報が開示されない限り、外部から個別に指摘しにくいからである。この点に関して、筆者の専門である公民連携の観点から2点コメントしたい。

 第一は、外からマクロ的にチェックする方法である。民主党が提示した無駄遣い解消による減額9.1兆円は、国の総予算のうち、減額対象としてふさわしくない国債の元利償還金や年金・医療等保険給付などを差し引いた70.9兆円の12.8%に相当する。

 一方、公民連携手法を採用すればおおむね1~2割の効果(VFM=Value For Money)が生じることが経験的に知られており、決して荒唐無稽(むけい)な数字ではない。もちろん、70.9兆円の中にはまったく民間に託せないものも多いだろうが、逆に、幅広く民間に委ねることで、より大きな効果を得ることができるものも多いかもしれない。

 一例として、公的不動産を考えよう。現状は、国や自治体の不動産は、それぞれの部署が縦割りで管理している。管理・維持・補修を民間に委託しているとしても、それは個別施設ごとに予算の事情で行っているにすぎない。だが、多くの公共施設を、群として特定の民間に管理を委ねれば、複数施設の長期管理契約を前提にして人材育成、機材購入、設備投資、技術開発などで大幅に効率化できるかもしれない。国と地方を合わせた公的不動産総額470兆円の利用効率(民間企業会計で言えばROA=Return On Asset=)を1%引き上げることができれば、年間5兆円の費用が削減されることになる。

 以上に紹介した、VFMやROAの考え方を用いれば、無駄の排除に具体的な目標値を設けて客観的に評価し管理することも可能ではないだろうか。

 第二は、中から具体的にチェックする方法である。本コーナーでも紹介した神奈川県藤沢市、千葉県習志野市が本年発表した公共施設マネジメント白書では、「施設ごとの利用状況、行政コスト情報、老朽化・更新需要、成果指標が詳細に表示されていることに加えて、地区ごとに施設の配置と費用対効果の状況を視覚的に判断できる整理を行っている」(2月2日オピニオン)。これにより、住民は、自分たちの地域のための税金の費用対効果を把握し、自ら優先順位を付けることができるようになることが期待される。

 国も同じである。アニメ産業を国が育成すること自体は否定されないとしても、そのために、立派なハコや専門の財団法人が必要とはならない。空いている廃校舎を自治体から借り、民間に運営を委ね、現場の人材育成費を補助すれば大きな支援になる。率先して協力する自治体や企業、国民も必ず現れるだろう。このように、具体的な費用対効果情報を開示すれば、さまざまな政策議論が可能になるのである。

 もし、投票日までに、無駄を解消する方法に関して、各政党がさらに具体的な説明を追加するならば、財源問題に関してもっと建設的な議論ができるに違いない。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)