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<2009年11月>事業仕分けに細分化・包括化・指標化の3視点の導入を

 鳩山政権は概算要求を対象に予算の無駄を排除する事業仕分けを開始した。10月22日、首相官邸で初会合が開かれた行政刷新会議の冒頭、同会議議長でもある首相は「できる限り歳出の削減に切り込んでいかないとならない」(10月22日iJAMP)と述べた。「同会議は(11月)11日から、各事業の必要性や効果について公開の場で議論。月内をめどに『現行通り』、『地方移管』、『不要』などの結論を出す」とされている(11月2日iJAMP)。

 事業仕分けは既に多くの自治体で実施され有用性が実証されている。その成功が新政権の生命線であるといって過言ではない。だが、限られた人員、限られた時間で本当に精査できるのかの不安も大きい。不十分な検討で「現行通り」に仕分けすると、もともとあったかもしれない改革意欲すらも封印してしまう。後日、「事業仕分けはしない方が良かった」とならないようにしなければならない。

 そもそも、ある仕事が改善の余地なく完ぺきということはあり得ない。仮にすでに100点だとしても、120点、150点を目指して常に改善する努力が必要だ。では、事業仕分けでどのようにして改善点を見つけるか。筆者の専門であるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)のノウハウから三つの視点を提案したい。

 第1は細分化である。現在、国の仕事に分類されているものでも、仕事の内容を細分化すれば必ずしもそうならない。

 例えば、刑務所である。刑務所は国民の安全安心を守る典型的な公共財として国の仕事とされてきた。だが、建物の設計・建設・維持管理、職業訓練、給食・清掃などは国家公務員が行う必然性はない。特に、職業訓練業務では、ホームヘルパー、販売士、IT(情報通信)関連、医療事務などの資格を取得させ出所後の就職を手助けする。民間が得意中の得意の分野である。こうした考え方から、既に複数の刑務所はPPP手法によって建設・維持運営され、職員の3分の2が民間人となっている例もある。海外でもPPP刑務所の例は多い。すべての事業を細分化して考え、国の仕事は最低限必要な部分に絞り込む必要があるのである(上記の例は官と民の関係だが、国と地方の関係も同様である)。

 第2は包括化である。細分化とは異なり、包括化では逆に複数の事業を束ねたり、長期的に考えることで生産性を上げ、国の財政負担を軽くすることを考える。

 例えば、国有施設の維持管理業務である。現在でも多くの業務は外注化されているため「現行通り」と判断されてしまいかねない。だが、実際は個々の施設ごとの縦割りの外注にとどまっている。一定の区域内のすべての庁舎など公共施設の維持管理を包括的にアウトソースすれば、維持管理の優先順位を決め、設備投資、人材育成、技術開発を長期的視点で行うことができるようになり効率化する。同じことは道路、橋梁(きょうりょう)などのインフラ、自動車運転・管理業務、人事・秘書業務などのソフトサービスについても言える。米国のサンディ・スプリングス市では市のサービス全体を一つの会社に包括的に委託して実績をあげている。

 第3は指標化である。指標化とは、事業の社会的な費用対効果を分かりやすい指標で示すことだ。事業の必要性を主張する側は豊富な材料を持っている。「不要」とするにはそれを上回る論拠が必要になり、それができなければ結局「現行通り」になりかねない。こうした状況を避けるために指標化は役に立つ。

 筆者は、自治体の事業の費用対効果の指標化を進めている。例えば、公民館利用件数1件あたりの費用である。指標がない場合は、公民館利用者は「必須」と答え、非利用者は沈黙する。その結果、総意としては「必要」と判断され公共事業が肥大化する。しかし、指標があると様相は一変する。例えば、ある公民館では、1回利用するたびに1万円の費用が掛かっており、自分たちの税金で賄われていることを知ると、「大幅な改善」、「不要」の意見が増加する。「それでも必要」の意見も合わせて、本当の民主主義が始まるのはここからだ。

 以上、事業仕分けを有効に機能させるための三つの視点を提案した。三つの視点は、細かな改善の有用性を示している。今まで日本経済は民間企業のこうした改善の積み重ねで成長してきた。それを政府が導入するのだ。時間と工数の制約から、今回の事業仕分けは、一部の事業しか取り上げないとしても、それで終わりではなく継続的な実施が必要である。筆者としても、これらの視点から、本当に予算の無駄を排除できそうか、実際の仕分け作業と結果、今後の継続体制の構築を注視していきたい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)