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<2010年10月>数値の把握による自己診断の勧め=自治体別社会資本更新投資額計算ソフト公開

 筆者がセンター長を務めている東洋大学PPP研究センターでは、大学院生の協力を得て自治体別に社会資本更新投資額を簡単に計算できるソフトを開発して公表した。
 本欄で再三指摘している通り、社会資本は永久には使えない。次第に老朽化し、いずれ更新しなければ倒壊、破損する運命にある。学校や橋が崩壊し、道路や上下水道が寸断される事態を見過ごすわけにはいかない。更新投資や統廃合を計画的に遂行する以外に方法はない。

 筆者がこの問題を本格的に指摘して各方面に働き掛けるようになってから約2年が過ぎた。当初は、行政や議員から冷淡な反応があった。「今までも何とかなっているから今後も大丈夫」「国が最後は面倒を見てくれる」「資産ができるのだから借金を増やしても構わない」「更新は票にならないのでやる気が出ない」「統廃合は市民が反対するので無理」という。中には、「問題だとしても、市民に知らせると動揺するので公表すべきでない」との意見もあった。いずれも、本当に問題の深刻さを認識しているなら、絶対に口に出せない意見だと思う。

 逐一反論するつもりはないが、現実に今でも存在するこれらの本音に対する唯一の効果的な反論は、客観的な数字を提示することである。何も手を打たなければこれだけのお金が必要だということが明らかになれば、財政面の制約から検討を始めざるを得ない。

 この問題意識に基づいて、筆者は本年4月の内閣府PFI推進委員会で、日本全体の公共施設・インフラを更新するためには、今後50年間にわたって年間8兆円確保する必要があると試算した。GDP公的資本形成の4割に相当する規模の実行および資金調達は、とても実現可能な水準ではない。むしろ、従来の公共投資予算の範囲内で、費用対効果を高めて更新投資を実現していく必要があるのである。

 その後6月に発表された政府の新成長戦略でも、「社会資本ストックが今後急速に老朽化することを踏まえ、維持修繕、更新投資等の戦略的な維持管理を進め、国民の安全・安心の確保の観点からリスク管理を徹底することが必要である。(中略)厳しい財政事情の中で、維持管理のみならず新設も効果的・効率的に進めるため、PFI、PPPの積極的な活用を図る」と記載されている。社会資本の更新投資および対策としてのPPPの必要性が初めて本格的に取り上げられたのだ。

 今回開発したソフトは、個々の自治体に当てはめたときの金額を算出するのが目的である。公共施設(学校、庁舎、公営住宅、公民館、図書館、病院ほか)、インフラ(道路、橋りょう、上水道、下水道)ごとに、過去の投資の年別物理量(施設は延べ床面積、上下水道は配管距離など)を耐用年数経過年に同量更新すると仮定し、現在の標準更新投資単価を掛け算して算出する。

 計算ソフトは、普及率の高いMSエクセル版を採用。手軽に計算できるようにするため、大幅な単純化(プラント・機械類を除外、更新単価を種別に1種類とする)を図り、入力すると更新投資所要額・必要予算倍率(公共投資予算をどの程度増額する必要があるか)が自動計算され、年次別更新投資必要額がグラフ化されるなど工夫している。

 社会資本老朽化に先進的に取り組んでいる神奈川県秦野市の例では、

(1)公共施設、道路、橋りょうの普通会計に関しては、必要予算倍率が1.56倍と予算が大幅に不足していること

(2)公共施設の更新期が到来した後、遅れて下水道の更新期が到来すること(財源を公共投資の更新に使い果たすと下水道更新時に余裕がなくなってしまう)

 ―などの実態が浮き彫りになった。こうした数字が可視化されて初めて真剣な対策を論じることができる。施設の統廃合、多機能化、長寿命化、不動産開発との組み合わせ、公共分野へのプロジェクト・ファイナンスの導入などのPPPの出番である。

 関連:社会資本更新投資計算簡略版ソフトを公表(簡易版ソフトがダウンロード可能)
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)