1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2010年11月>行政財産と普通財産の一元化を=社会資本更新投資問題への切り札

<2010年11月>行政財産と普通財産の一元化を=社会資本更新投資問題への切り札

 前号で紹介した自治体別社会資本更新投資額計算ソフトには早速多くの自治体から問い合わせを受け、実際に計算した自治体からの反応も返り始めている。実例が集まるにつれて、それぞれの自治体の位置付けも明らかになる。そうすれば処方せんも描きやすくなる。
 現在のところ、集計の指標として次の二つを用いる予定である。「人口1人当たりの物理量」と「取得後30年以上経過した物理量の比率」だ。比較的分かりやすい公共施設を例に取ると、「人口1人当たりの公共施設の延べ床面積」と「建築後30年以上経過した建築物の延べ床面積の比率」と表現することができる。

 先行して公共施設マネジメント白書を作成した自治体の例を含めると、今までの集計では、前者が2~3平方メートル/人程 度、後者が30~50%程度である。サンプル数は少ないがこれを一応の目安とすると、「人口1人当たりの公共施設の延べ床面積」が3平方メートルを上回っている自治体は、「施設(ハコ)過剰状態」にあり、思い切った施設の再編整備が不可欠といえる。また、「建築後30年以上経過した建築物の延べ床面積の比率」が50%を上回っている自治体は、今すぐ対策に着手する必要がある。

 このように、客観的な数値を把握し指標化するのは冷静な対策の判断のためだ。あたかも人間の健康診断と似ている。地域の公共サービスをもっぱら行政に依存する「大きな政府」は、生活習慣病のように自治体財政の活力を奪ってきた。深刻になる前に、従来とは異なる対策に踏み出さなければならない。酒もたばこもやめず、運動も食事制限もしないで健康にはなれないのである。

 対策として、最も有効なものの一つが、公共施設の多機能化である。従来、公共施設は一つの機能で一つの施設を持つことが当然とされた。大規模な施設である学校や庁舎はもとより、小規模な公民館、図書館、市民センター、幼稚園・保育所、学童クラブ・児童館、福祉施設などおびただしい数の独立施設が地域に建設された。補助金の関係で、似たような施設が別々に建てられている例も多数存在する。

 われわれは、いつからハコが多ければ豊かになった気がしてきたのだろうか。確かに、現に存在する施設がなくなるとすれば多くの人は反対を唱えるだろう。だが、本当にそれは合理的だろうか。必要なのは、施設ではなくて機能のはずだ。本を読んだり読み聞かせしたりする機能は重要だが、それは図書館の立派なハコがなければ実現できないわけではない。コミュニティーのメンバーで顔を合わせて話し合うことは重要だが、それは独立した公民館や自治会館がなくてもできる。

 こうした考えを積み重ねると、地域には、多機能のコミュニティー施設を造っておいて、それぞれの機能の担当部署が必要な程度借りるという発想にたどり着く。核となる土地、建物は十分な広さを持つ学校が最適だ。老朽化した学校校舎を建て替えるたびに、多機能のコミュニティー施設に変更する。この施設に、前述の小規模施設が更新期を迎えるたびに機能を吸収していく。地域の人口構成に応じて使い方を変えていけば、片方に余裕スペースを抱えながら、足りない施設を新設するというもったいないことをしなくてすむ。単機能主義にこだわっていると廃校にせざるを得ないケースでも、多機能の一つとしてであれば存続できる可能性も出てくる。

 また、老人ホームと小学校が一体化していれば、お年寄りと子どもたちの接点が広がる。母親が生涯学習サービスを受けながら幼児を保育所に預けることができるようになる。プール、体育館、PC室などは学校と生涯学習が共用すればよい。多機能施設は、今までの単機能施設にない相乗効果や新しいライフスタイルを生み出す。

 もちろん、多機能化しながら管理責任を教育委員会、学校長に残すのは筋違いだ。多機能の中核コミュニティー施設の管理者は首長自身とし、首長直属のチーフ・アセットマネージャー(CAM)職を新設する。それぞれの部署はCAMからスペースを借りるが、その際借り賃を計算して事務事業評価を公表することで、ニーズの肥大化を防ぐことができる。

 迫りくる公共施設の老朽化問題に対処しつつできるだけ機能を維持するには、多機能化を織り込まない限り無理だ。そこでネックになるのが、国有財産法、地方自治法に規定されている行政財産と普通財産の区分だ。人口が増大し経済も右肩上がりの時代には、増加する行政ニーズに対応するため専用の財産を持っておくことの意味はあったと思う。しかし、逆に人口減少時代になると、一度設定した行政財産が、過剰能力を抱えた不良資産に変化してしまう。需給のミスマッチの中多くの無駄が生じてしまう。多機能化の前提として、行政財産と普通財産の区分の廃止、少なくとも、行政財産を一本としてその中では自由に用途を変更できるようにする制度改革を提案したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)