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<2010年12月>社会資本老朽化への挑戦~埼玉県宮代町の場合~

 本欄で連続して取り上げている社会資本老朽化問題に対する最新の公共施設マネジメント報告書が公表された。埼玉県宮代町(人口3万3000人)の「宮代町公共施設・インフラの更新のあり方の研究報告書」である。筆者が長を努める本学PPP研究センターが、町から委託を受けて約9カ月間研究した成果物である。
 研究の最大の目的は、今後の社会資本の更新投資負担の計算である。老朽化した公共施設、インフラは未来永劫(えいごう)使い続けられるわけではない。耐震補強してもいずれは更新せざるを得ない。更新が財政的に可能なのか、数字を計算しなくては明らかにならない問題に正面から取り組んだ。

 その結果、公共施設、道路、橋梁(きょうりょう)の今後50年間の更新投資額は、最近3カ年の平均普通建設事業費に対して、新たに1.6倍から1.9倍の規模が必要とされることが明らかになった。

 公共施設やインフラが充実している方が良いかどうか単純に問われれば、100人が100人充実させた方が良いと言うであろう。だが、今後、少子高齢化で歳入が減少することが予測される中、介護福祉など他の費用を削ったり、あるいは大幅に増税(利用料の引き上げ)したりするという道を選べるだろうか。言うまでもなく、「最後は国が面倒を見てくれる」という無責任な姿勢は論外だ。古い学校舎もインフラも更新できない悲惨な町になってしまう前に、やるべきことはあるはずだ。

 今回の研究は、他地域の先行例にない以下のような特徴を有している。

 第1に、小規模自治体、かつ、町村部における初めての例である。先行例は、いずれも人口10万人以上の規模であり、本研究は、全国に多数存在する小規模自治体の模範となるであろう。

 第2に、公共施設だけでなくインフラ、機器について詳細に調査した初めての例である。更新投資は公共施設、いわゆるハコモノだけでなく、道路、橋梁、上水道、下水道のインフラ、あるいは、医療機器などの機器・プラントも更新する必要がある。今回の調査で、耐用年数の短い機器類の更新問題の深刻さも改めて浮き彫りになった。

 第3に、社会的な分析評価を行った点である。従来はハード面のみに着目して分析が行われてきた。今回は、定住人口、産業振興、子育て支援などソフト面にも着目して社会分析を行った。結論としては、宮代町の魅力は、首都圏近郊としてはまれなゆとりある空間や自然であり、公共施設・インフラの更新のありようによって町の魅力が損なわれるものではないことが示された。

 第4に、公共施設について統廃合を具体的に検討した点である。施設を現状のまま維持することが財政上無理であるならば、代わりになる選択肢を提示しなければ無責任である。本報告書では、町内の複数の学校等を建て替える際に、多用途に利用できる中核コミュニティー施設とし、そこにさまざまな機能を集約する方法を想定した。さらに、統廃合を行わずに現状を維持したケースに対して、中核コミュニティー施設への一定程度の集約を行うA案、大胆に集約して更新投資負担を大幅に削減するB案を仮定して、それぞれの更新投資負担額を試算した。具体的な施設名に言及したのも初めてであろう。統廃合しなければ放棄せざるを得なくなる機能も、この方法なら維持できる可能性があるのだ。

 もちろん、これらの案のうち、われわれ研究チームがいずれかを推奨するものではない。財政負担と利便性のバランスをいかに取るかは、最終的には地域自らが決断すべき問題であり、報告書はその検討材料を提示できるにすぎない。これは、健康診断における患者と医師の関係に似ている。研究チームは医者として正確な状況を評価し助言する義務があるが、それを受け止めてどう行動するかは患者である町次第である。

 今回の詳細な調査に踏み切った町の先見性と責任感のある決断に心から敬意を表するとともに、早急に報告書を参考にした具体的な行動に入ることを期待したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)