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<2011年01月>痛みを伴う政策論をタブー視するな

 通常国会が開会した。喚問、問責、審議拒否の国会対策だけが目立っており、内部分裂状態にある民主党と旧来型野党と変わらない自民党は、いずれも国民の負託に応えていないと言わざるを得ない。肝心の政策論がまったく見えてこない中、唯一期待しているのが与謝野馨氏の経済財政担当大臣就任だ。
 誤解のないようにあらかじめ申し上げると、筆者は消費税増税に賛成しているわけではない。税収と支出のアンバランスな構造を解消するためには、行財政改革と新成長戦略の徹底的な推進が不可欠だ。少なくとも、増税しつつ、一方で、バラまき的な政策を実現するのは筋違いも甚だしいと思う。

 にもかかわらず、増税肯定論者と見られる与謝野氏の大臣就任を歓迎するのは、それによって、痛みを伴う政策論のタブーがなくなり真剣な議論が始まるからである。

 確かに、「増税の前にやるべきことがある」というのは一見正論である。だが、この姿勢の背後には、「カネがなくても歳出を拡大すべきだ。ひとまず国債を発行すればよい」、さらに言えば、「本当に困ったらその時点で増税すれば良い。それまで国民には言う必要はない」という無責任な真意が隠されているかもしれない。少なくとも、その政治家がどちらなのか国民には区別がつかない。増税よりも具体的かつ説得力を持ったシナリオを提示しない限り、実は、知恵もなく税の議論から逃げているだけだと思われても仕方がないのではないか。

 そもそも、混迷するねじれ国会を生んだのは、2010年8月の参院選での与党の敗北だ。その原因の一端には、菅直人総理の消費税発言があるとされている。「増税を口にすると選挙に負ける」という、きわめて下手なメッセージを国民は政治家に送ってしまったと言える。にもかかわらず、民主党にとって土壇場の戦いになりかねない統一地方選を前に与謝野大臣を起用したのは政治的には無謀である。だが、政策的には大きなプラスになる。

 なぜならば、増税を含む経済政策が選挙の争点になることで、選挙中は沈黙してやり過ごしておいて、政権を握ってからおもむろに切り出すと言う、悪賢い選挙対策が許されなくなるからだ。菅総理が口火を切った税制論議は、結論をどちらかに決めることよりも、各政党、各議員にスタンスを明らかにするよう迫るという大きな意味を持つ。それは有権者である国民に問われた課題でもある。もちろん、増税なしでの政策パッケージが具体的に提示され、実現可能であればそれに越したことはない。ただし、その場合でも国民負担の増加は選択肢の一つとして検討されていなければならない。

 負担増は国に限ったことではない。歳入と歳出のアンバランスは国同様に巨額の財政赤字を抱える地方自治体にも言える。

 先日、ある自治体で公共施設の老朽化の研究結果を報告した。人口1人当たりの公共施設が多いその自治体には、老朽化した施設を更新する際に一つの施設で複数の機能を持つような機能統合を行っていく必要があると診断した。物理的には公共施設の数が減り、延べ床面積が小さくなる。そうしなければ財源不足が生じて市民負担を増やさざるを得ない。現状規模を維持しようとすると、1人当たり4万円(インフラを含んだ値)の負担増が今後50年間にわたって続くことになる。国の補助金がある程度続くと仮定しても、相当の負担増になることは間違いない。

 確かに、公共施設を少しでも減らすことに反対する人は多い。一方、市民負担を少しでも増やすことに反対する人も多い。責任ある政治とは、両者のトレードオフの関係を提示して逆に市民に認識を求めることだ。まず、認識した上であれば、その中間に位置するいろいろな知恵も出てくるのである。この自治体は来年度から早速検討を開始する予定だ。大いに応援したい。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)