1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2011年03月>復興へスピーディーな政策展開を

<2011年03月>復興へスピーディーな政策展開を

 前号(3月3日iJAMP)では、政局に終始する政治家の行動が何ら国民にプラスになっていないことを指摘した。「不安定な政権運営は、国民の危機対応力を低下させる」とも述べた。その8日後に東日本大震災が発生した。被災されたすべての方にお見舞いを申し上げるとともに、被災地の最前線で復旧に当たっている関係者に心から敬意を表したい。筆者も、専門の経済や金融の立場で微力ながら復興に貢献できればと考えている。

 さて、震災後の政治休戦でひとまず政局の混乱は避けられ、官民総動員態勢で難局に当たっている。発生した事象の大きさを考えれば試行錯誤はやむを得ず、筆者としては合格点を与えたいが、足りない部分を次々に補うスピーディーな政策の展開は不可欠である。

 第1に、日常の経済活動にできるだけ早く復帰することである。今回は、強い余震や原発事故を伴った現在進行形の災害のため、今の段階で復興を口にすることがはばかられる雰囲気がある。だが、3月11日に発生した被害および被災者が存在するのは事実であり、災害が収束していないからといって被害を放置してよいことにはならない。復興には、経済のメカニズム自体を平常体制に戻す必要がある。過剰な自粛は日本全体の税収や雇用を縮小させ、被災地の復興をさらに遅らせる。筆者の勤務する東京都心でも飲食店やサービス業は青息吐息だ。

 菅直人総理自ら、速やかに、「すべての国民がそれぞれの立場でできるだけ普通の生活に戻ることが最大の貢献である」という具体的なメッセージを出すべきであろう。平常体制に戻り得ない例外である電力不足に関しては、計画停電の長期計画を示すとともに、大口需要者がそれぞれ従来比削減率の目安を作り、その範囲内で自由に利用方法を決める方法が妥当だ。周辺の様子を見ながら恐る恐る活動するという状況では、前向きの活力を見いだせない(震災後休館していた東京のAKB48劇場は従来比50%の省エネで再開した)。

 第2は、最短時間かつ最小費用の復興を目指す知恵である。今回、できるだけ自治体の負担を減らして国が責任を負う必要性が指摘され、政府も記者会見等でそうしたニュアンスを伝えている。震災に対して自治体に責任がないことは事実であるが、国が負担できるかどうかは別問題である。全額国負担とした上で不足のための国債を日銀が引き受けるという提案も出ているが、国の財政への信頼性の低下が格付けの引き下げや金利上昇という新しい危機を引き起こせば、本来可能な復興すらもできなくなる。

 現段階で言えるのは、1400兆円の個人金融資産をできるだけ復興に振り向けることである。特定の復興事業を目的とする債券とすれば、復興に貢献したい人たちの購入は期待できよう。金利所得を非課税とする免税債とすれば、通常よりも低金利で発行することができる。また、最短時間かつ最小費用の実現にはさまざまな知恵が必要だ。震災発生直前に閣議決定されたPFI法改正案では、社会資本整備に対して運営権(コンセッション)や民間提案方式が取り入れられている。一刻も早く成立させ、具体的に応用できるようにしていただきたい。煩瑣(はんさ)と指摘される手続きも、復興事業を包括認定することなどで大幅に簡素化すればスピーディーに進められるはずだ。

 第3は、復興後の公共施設の在り方である。今回、学校、庁舎、公営住宅、公民館などすべての公共施設が被災した。復興に当たっては、防災、環境(省エネルギー)機能を完備した性能が求められるが、すべての施設を理想的性能で再生するとなると財政負担は極めて大きくならざるを得ない。結局お金が足りなくなって、過大な負担を負った割には中途半端な性能になってしまうおそれが強い。

 この点に関しては、筆者が提言している一般的行政財産制度の速やかな導入を求めたい。この制度は、学校、公民館などの別々の施設を建設するのではなく、多機能に使える施設をコミュニティー単位で建築し、そこに学校、保育所、老人福祉施設などの機能が入居する方法である。施設の立地を安全な場所とし、構造は頑丈なものとして災害時の避難所として使えるようにする一方、中に入る機能はその時点でコミュニティーが必要とする機能を臨機応変に入れ替えられるようにする。多機能化で共用部分や余剰部分を圧縮することができる。用途を変えた時の補助金返還も不要となる。これにより、施設の安全性を高め、住民ニーズを実現し、財政負担を大幅に引き下げることができる。もちろんこの方策は被災地に限定する理由はない。メディアには報じられていないが、首都圏の複数の自治体では、今回の震災で庁舎が危機的状況となり建て替えに動きだした。学校の老朽化対策も急務である。ぜひ全国的な政策として実現していただきたい。             
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)