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<2011年03月>復興へスピーディーな政策展開を

 寄稿者泣かせの政治が続いている。先々週から何度も原稿を書いては書き直している。本稿も配信時点でどのようになるのかはなはだ心もとない。ピントがずれたものになっているとしてもご容赦願いたい。

 事実としては、3月1日未明に2011年度予算案が衆議院を通過した。憲法の規定により、参院の結果によらず年度内成立が確定した。従来であれば一山越えたというべきである。だが、特例公債法案や税制改正法案など予算関連法案の採決は、予算案と分離して先送りされている。今後、衆院を通過して参院に送付されても、ねじれ国会の中で原案のまま参院で可決される見込みはなく、衆議院での再可決も極めて厳しい。

 今後、与野党間の修正協議による合意がなければ、予算案そのものが不安定な状態にあるという状況に変わりはない。政治家は、国民から集めた税金や国民が負う借金を一体どう考えているのだろうか。こうした中、明快な言葉で政界に喝を入れてくれたのが、日本経団連の米倉弘昌会長である。

 2月21日、米倉会長は、記者会見で、「『責任ある国会議員として、きちんと行動してほしい』と語り、強い不快感を示した」(2月21日iJAMP)。「民主党の小沢一郎元代表に近い衆院議員16人が会派離脱を表明したことを『予算および関連法案を通す時期に、与党議員として無責任極まりない』と厳しく非難。その一方で、自民党の態度も『民主党の動きに乗じて政局化しようというもので、国民生活や国益を無視した行動』と述べ、与野党ともに国民の期待に応えていないと批判した」(同上)、さらには、「国民生活を顧みない政治家を『給料泥棒のようなもの。国民のために何もしていない』とこき下ろした」(2月23日iJAMP)と報じられている。

 経済人としての率直な感想で、共感を覚える人は多かったと思う。国民にとって政局が意味を持つのは、異なる政策を掲げるグループが議論を戦わせ多数の支持を得た政策が進められる場合に限られる。政局は政治家にとってのゲームにすぎないのだ。

 もちろん、衆院議員16人は、2月17日の記者会見で、「無原則に政策修正を繰り返す菅政権に正統性はない」とした宣言文を読み上げており、衆院選マニフェスト堅持という政策を明らかにしている点は評価できる。だが、財源確保の具体案がない限り、マニフェストを実行すべしという建前だけでは政策論になり得ない。また、そもそも、衆院選マニフェストを堅持するか否かは昨年9月の代表選の争点の一つだったはずだ。ルールにのっとって自分たちで決着をつけたことを蒸し返すことが許されるならば、無責任な組織と言わざるを得ない。

 一方、自民党は予算の組み替え動議を提出した。「子ども手当の削減や高速道路無料化の執行停止、公務員人件費の削減などによって5兆3100億円の財源を確保する」内容だった(2月24日iJAMP)。この案は、政府案に対する代案であり、政策を表明していると評価できる。だが、主眼は民主党マニフェストの柱の否定でしかなく、そのマニフェストに大敗した当時の自民党の政策のどこをどのように変えるのかの理念が見えてこない。仮に、今後の政策協議に応じないとすれば、民主党分裂を狙った政局流動化が目的だったと言われても仕方がないだろう。

 もちろん、だからと言って現政権の力不足が弁護されるものではない。結果的には、党内反主流派、野党の攻勢への個別対応に追われていると言わざるを得ない。予算関連法案が成立しないと、「住宅取得にかかる登録免許税、牛肉やチーズなどの輸入関税に対する軽減措置が失効し、国民生活に大きな影響が出る。」(3月1日iJAMP)。それどころか、不安定な政権運営は、国民のモチベーションや危機対応力を低下させる。予算案の財政的な裏付けを確保できないのであれば、衆院選マニフェストのうち子ども手当、高速道路無料化などは全面的に撤回した上で、改めてマニフェストの本当の柱だった(はずの)政治家主導の政治を実現するための予算として組み替えたほうが良い。それを通すために、国民新党の亀井静香代表の提唱している「自民、公明両党などからも人材を登用した超党派の連立政権の樹立」も決して荒唐無稽な案ではないと思う。

 いずれにせよ、政治家は、政策論を戦わせて職責を果たしてほしい。政局ゲームに終始する政治家が国民の税金から給料を受け取る資格を持たないのは当然のことである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)