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<2011年08月>「3階層マネジメント」で公共施設を管理しよう

 各地で公共施設マネジメントの動きが本格化してきた。公共施設の規模と老朽化度を把握し、今後更新するための費用を算出し、財政的に可能な範囲で維持するための優先順位を付ける試みだ。
 現在、30以上の自治体で正式な検討が始まっている。2011年3月に総務省の外郭団体である財団法人自治総合センターが「公共施設及びインフラ資産の更新に係る費用を簡便に推計する方法」を発表したこともあり、今後は一気に加速するであろう。

 筆者が関係している自治体で試算したところ、「近年の公共投資予算の範囲で現在のすべての公共施設を更新できる」自治体はなかった。学校、庁舎をはじめとする老朽化施設が一斉に更新期を迎える一方、公共投資(投資的経費)は抑制、圧縮が続いているからである。「増える更新需要を減らした予算で賄わざるを得ない」ジレンマは深刻だ。

 各地で相談を受けると、「財源がないなら一律にカットすべきだ」という意見がある一方、「財源がなくても必要な施設を切ってはならない」という考え方も強い。どの施設をどのように更新するかしないかの議論が合理的に行われないと、必要な施設が老朽化したまま放置される一方、政治力のある施設が豪華に建て替わり、財政問題は一向に解決せずに次世代に問題が先送りされるという最悪のシナリオに陥ってしまう。

 本稿では、合理的な検討の目安とするため、多くの自治体に共通する方法を一つ提示したい。公共施設を、サービスの対象範囲の大小から3階層に分け、それぞれの階層ごとにマネジメントする方法である。3階層とは、自治体全域をサービスの対象とする「全域」、小中学校単位を対象とする「地域」、町内会、個人を対象とする「地区」である。

 「全域」の代表施設は庁舎、病院、博物館・美術館、中央図書館、文化ホール、大型体育施設である。廃棄物処理施設、斎場、消防なども含まれるだろう。「地域」の代表施設は小中学校、児童館・学童クラブ、幼稚園・保育所、老人福祉施設、公民館、地区センター、地区図書館である。「地区」の代表施設は集会所、公営住宅である。

 この3階層に従ってマネジメントの基本方針を立てる。

 「全域」のキーワードは「広域化」だ。庁舎を除いて、全域にサービスの恩恵が及ぶ施設は自治体の区域を超えて利用できるものだ。現に、廃棄物処理場や斎場では一部事務組合を設立して共同で事業を行うことが一般化している。この考え方を、病院、博物館・美術館、中央図書館、文化ホール、大型体育施設にも応用する。単独の自治体では財政的に無理で更新を諦めざるを得ない場合でも、複数の自治体で提携して相互に施設を持ち合えば維持できる可能性が高まる。担当自治体は自分で建設して、他自治体住民に開放するとともに、担当しない施設は将来にわたって建設しないことを約束する必要がある。ワンセット主義を捨てることが必要だ。

 「地域」のキーワードは「多機能化」だ。各施設を別々に持つことをやめる。小中学校区単位で、学校の更新期に合わせて規模の大きなコミュニティー施設を建設し、そこに、学校、児童館・学童クラブ、幼稚園・保育所、老人福祉施設、公民館、地区センター、地区図書館がテナントとして入る。特定の施設のみにしか使えない仕様ではなく、将来の人口変化に備えて自由に用途を変えられるようにしておく。複数教室の間仕切りを外せるように設計された学校は既に誕生している。この方式であれば、階段、廊下、事務室、会議室、倉庫などの共用施設が少なくて済むだけでなく、空き教室など余裕スペースも互いに有効活用できる。今の時点で将来のニーズを予測する必要もないので、利害対立を避けられることも大きな利点だ。

 「地区」のキーワードは「ソフト化」だ。自治体自身が施設を保有するのではなく、民間施設を借りる方法を推奨する。「地区」施設は規模が小さく民間ストックも過剰な分野なので、有効利用は官民双方にとってプラスだ。政策的に重要な場合は、重要性に応じて費用を補助する方法を取ればよい。集会所は民間の学習塾などの空き時間を借りて利用料を補助する方式、公営住宅は民間住宅への家賃補助に代替していく方式などである。

 3階層マネジメントの導入によって、重要なサービスを維持しつつ、公共施設の総量を大幅に圧縮できるはずだ。賛成派と反対派が正面からぶつかることなく、共通の目線で対話できるようになる。本学PPP研究センターでは、さらに具体的な有効性を確認するための研究を続けている。モデル的に検討したい自治体はぜひ手を挙げていただければ幸いである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)