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<2011年10月>「健全化判断比率」を超えないことは財政のゆとりを意味しない

 10月14日、地方自治体財政健全化法に基づく2010年度決算の健全化判断比率が発表された。

 その結果、財政再生基準(財政状況の著しい悪化などにより、自主的な財政の健全化を図ることが困難な状況において、計画的にその財政の健全化を図るべき基準)以上にある団体は1団体(北海道夕張市)のまま増えていない。早期健全化基準(財政収支が不均衡な状況その他の財政状況が悪化した状況において、自主的かつ計画的にその財政の健全化を図るべき基準)以上にある団体は5団体と、09年度決算の14団体を大幅に下回った。

 このことだけをみると、地方財政が健全な方向に向かっているように見える。健全化法が施行されて4年目を迎え、厳しい財政状況の中で健全化の努力が払われていると評価できる。

 数日前に、ある地方議員の会合に呼ばれた。冒頭あいさつに立った議員は、「財政が健全であることのお墨付きをもらったことは大変喜ばしいことだが、この地位を守れるように行財政改革は続けていかなければならない。市長があれもやりたいこれもやりたいと言い出さないよう監視するのが我々の仕事だ」と語っていた。「財政が健全なら、あれこれやっても良いはずだ」というありがちな発想を取らず、行財政改革を続ける意欲は大いに結構である。だが、前提として注意すべき点がある。

 そもそも、健全化判断比率を超えないことは、財政のゆとりを意味するわけではないということだ。実際、財政が厳しいと常日頃言われてきているにもかかわらず、早期健全化団体が大幅に減少しているという事実にはかなりの違和感がある。以下の点は、正確に認識しておかなければならないだろう。

 第1は、09年度、10年度は国の経済対策の実施により国庫支出金が大幅に増加しているという点である。国からの臨時収入によって財政悪化が食い止められるのは望ましいことであるが、あくまでも特殊事情であり、恒常的に期待できるものではない。

 第2は、健全化判断基準は財政面のすべての要素を記述しているわけではないという点である。人間の健康診断と同じで、血液検査が良くてもMRIで異常が見つかるかもしれない。あくまでも数種類の健全化判断基準を満たしているというだけで、「まったくの健康」という意味ではない。その意味では、「健全化」という言葉を誤解してはならない。

 第3は、老朽化はこの基準では示されないという点だ。本欄で再三指摘している通りわが国の社会資本(公共施設とインフラ)は近年急激に老朽化してきており、今後、その維持補修更新投資の金額が大幅に増加し、財源不足が確実視されている。将来の費用が見込まれるなら、現時点で引当金を計上している必要があるが、一部の例外を除いて社会資本全般の維持補修更新投資を将来に必要な支出として決算書上記載している例はない。

 つまり、老朽化に関しては、ほとんどすべての団体が「不健全」と判定される可能性が高い。東洋大学PPP研究センターでは、すでに自治体別の更新投資負担の計算ソフトを開発しているほか、今後公共施設延べ床面積の自治体別実数等の参考データを開示していく予定である。こうした客観的データが対策を考えるうえで必須だと考えるからであるが、もちろん、その前提として、「財政が健全なら、あれこれやっても良いはずだ」という無責任な発想に陥らないようにすることが先決であることは言うまでもない。 
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)