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<2011年12月>地元企業政策、保護から育成に転換を

 公共投資であれ、公共サービスであれ、何らかの仕事を民間企業が担うことは珍しくない。単純な仕様発注の公共工事ですら、実際に工事をするのは民間企業であり、公務員ではない。庁舎の警備、清掃、植栽管理を公務員自ら行っている例も、今ではほとんどないであろう。そういう意味では、国、自治体の仕事の大半は、民間との協働(広い意味でのPPP、パブリック・プライベート・パートナーシップ)で成り立っているといえる。

 自治体が民間と協働する際にしばしば登場してくるのが、地元企業を優遇すべしという主張である。地元企業限定発注や、地元企業が受注しやすいようにわざわざ仕事を細かく分ける分離分割発注も広く行われている。

 地元企業を優遇すれば、地元にお金が落ち、そのお金が地域内で循環して新たな消費を誘発し、税収も増え雇用機会も増える。地元企業は地元のことをよく知っていて、きめ細かく機動的なサービスを安く提供できる。さまざま理由が付されている。

 経済の刺激になるという点は一理ある。だが、その点はあくまでも派生的効果であり、入札時の総合評価の項目に加えれば足りる。

 また、地元企業が、コスト的にも質的に優れているという主張は、そもそも論理的でない。本当に安くて良い仕事ができるなら、競争しても十分に勝てるはずで、地元以外の企業を排除する必要も仕事を細かく分ける必要もないからだ。優遇すべきという主張の背後には、地元以外の企業と競争すると負けるから保護してほしいという本音が隠されている。

 この本音は、一般の多数の市民に対して、質やコスト面で見劣りする(可能性のある)商品を購入せよと言っていることに等しい。そのような主張は他の分野ではありえない。ドトールやスターバックスへの入店を禁じて、商店街の喫茶店でお茶を飲むことを義務付けるようなもので、自由主義経済の日本ではありえない。

 何より保護される地元企業のためにならない。必要なのは、他地域の企業に勝てるような競争力を身に付けることであって、役人や政治家に陳情することではない。また、役人や政治家の仕事は、市民の不利益の上に特定の企業を保護することではなく、地元企業を育成し競争できるレベルに引き上げ、市民に利益をもたらすことである。

 地元企業の競争力とは、365日地元にいることによって生じる迅速できめ細かな対応力であり、地元とのネットワークで把握している隠されたリスクへの対応力である。こうした利点を生かすには、自治体が民間に託す仕事の内容を変える必要がある。たとえば、公共施設の維持や新設の場合、維持保全や運営も含めたり、近隣の施設をまとめるなどして仕事の範囲を広げることが必要である。分離分割発注で細かくされた仕事では到底身に付かない知恵が自然に得られるはずだ。

 北海道の一部では、道路、橋梁(きょうりょう)、河川施設を一括して指定管理者に委託する包括委託がなされ高い成果を上げている。計画的な業務で効率性が高まり、気象や地形を知り尽くした地元企業が大活躍している。こうした実績を積んでいけば、他地域、海外へ地元企業が進出できるようになる日も夢ではないだろう。

 地元企業を単に保護するのではなく成長する機会を与える。地方の役人や政治家に必要なのは、こうした発想の転換である。 
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)