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<2012年05月>日本版レベニュー債の導入を

 5月21日付の日本経済新聞夕刊(東京本社発行版)に、「政府・民主党が、地方公営企業の資金調達にレベニュー債を導入する」との趣旨の記事が掲載された。レベニュー債とは、その資金を使う対象プロジェクトがあらかじめ限定されているとともに、債券の元利償還をそのプロジェクトの収入だけに限定する特定財源債である。国の政策が今後記事通りに展開するならば、日本の自治体の資金調達は劇的に変わるだろう。財政健全化にも大いに役立つはずだ。

 現在のわが国の自治体の外部資金調達は、発行者の全財産から返済する一般財源債で行われている。自治体から見れば、収入の有無にかかわらずさまざまなプロジェクトに使うことができる。一見、自治体の資金調達の自由度を広げているようにみえる。

 だが、このことが大きな問題を引き起こしてきた。債券を購入する貸し手(金融機関や投資家)から見れば、全財産が担保になっていれば安心できる。プロジェクトが失敗したとしても、自治体がさらに負債を増やす、増税する、国の支援を得ることも期待できる。貸し手は責任を問われることなく貸し続けることができる。

 読者は夕張市の破綻をご記憶だろう。財政上の危機にひんしていながら借金を増やし続けた。それが可能だったのは、責任を問われることのない貸し手と、事態を先送りし続けた借り手がいたからだ。夕張市の破綻は、貸し手と借り手のモラルハザードから生まれたのである。夕張市の例は特殊ではない。今や、日本の負債依存度は先進国でずばぬけて高い。自治体の自由度を広げ財政を支えるという趣旨のはずの一般財源債制度が、結果的にモラルハザードを生み財政を悪化させたのだ。

 これに対して、特定財源債では、対象となるプロジェクトが成功しない限り、貸し手は返済を受けることができない。自治体破綻制度が確立している米国では、一般財源債を発行するハードルは非常に高く、レベニュー債やTIF(タックス・インクリメント・ファイナンス、都市開発などに用いられる将来の税収から返済する資金調達)などの特定財源債が一般化している。貸し手は、成功する可能性の高いプロジェクトを選び、成功させるよう必死に助けることになる。

 この結果、優先順位の低い支出にブレーキがかかるとともに、自立できるような優秀なプロジェクトは有利な資金調達ができるようになる。今懸念されている老朽化した社会資本更新投資の資金調達には必要不可欠の手段である。

 新聞記事によると、日本版レベニュー債は地方公営企業に対して実施されるとされている。有料道路など収入のある地方公営企業では、自治体の保証なしに将来の収入を担保にして民間資金を調達することが可能になる。上下水道や病院でも可能であろう。現在の制度では認められていない、公営企業の財産を自治体本体の財産から分離するための法改正を行うとされている。特定財源債の貸し手の立場を保全するには当然の改正だろう。

 今後は、対象を公営企業以外にも拡大すること、利用料収入だけでなく将来税収も財源として組み込む日本版TIFを導入すること、特定財源債の貸し手が特定財源に対しては優先権を持つ(一般財源債の貸し手と同等に扱わない)ことを明確化するなどの制度整備が必要である。以上により、経済的合理性を有するプロジェクトを自立させることで、経済合理性以外の理由で必要な公共サービスの財源を生み出すのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)