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<2012年11月>的外れの復興交付金批判

 復興交付金の使途が批判の的になっている。被災地で自由に使うことができない一方、被災地以外で復興と無関係の事業に使われているとの指摘だ。被災地での交付金の「消化が遅れている」ことも加わって、「とにかく被災地で使うべきだ」の大合唱になっている。あたかも復興交付金がいくら使われたかが復興の速度を表していると言わんばかりである。だが、この議論は的外れである。

 数十年前のニーズに沿って作られた町をそのまま現状復旧するだけでは、人口構造も産業構造も大きく変化する数十年後のニーズに合うとは思えない。被災地では将来に向けて、まず、どのような地域を作るのかの真剣な議論が必要だ。それには時間がかかる。先日、ある自治体から「復興交付金が使えるとはいえ、財政規模に対して事業規模が非常に大きく、必要性が高いとも思えない公共施設を建設してもよいものだろうか」という相談を受けた。

 復興を目に見える形にすることは悪いことではない。だが、十分な議論なくとにかく交付金が使えるという理由で事業を進めるのは危険だ。建設費は全額国が補助したとしても、今後長期間にわたり続く維持管理費、運営費、そして老朽化した後の更新投資費用は自治体負担だ。身の丈を超えた投資の責任は、結局、将来の住民が負うことになる。建設費を国費で賄った後の費用負担に苦しむ例は、合併特例債や電源立地交付金などの他の分野にも見られる。その過ちが繰り返されようとしている。

 持続可能性を考慮していない国の制度にも問題はあるが、被災自治体には、何でも自由に使うのではなく、必要性を十分に吟味し優先順位を付けるという勇気と決断が必要だ。それが自分たちにとってプラスになるはずだ。また、われわれも、使っていないからといって「消化が遅れている」などと批判してはならない。的外れな批判が、「今何か使わないと、次の支援が受けられない」という心理に被災地を追い込む効果は無視できない。

 ところで、被災自治体が吟味しようにも大きな問題がある。それは職員が絶対的に不足していることである。民間事業であれば民間に任せれば良い。だが、震災復興には自治体の仕事、公的な権力をもとにした仕事が不可欠である。典型的なものが高台移転である。津波被害を受けた地域から、その可能性の低い高台に移転するのはとても理にかなっており、最優先で取り組むべき仕事だ。

 しかし、高台の土地を測量し、造成し、現在地と高台の土地の権利を変換し、インフラを整備する仕事は、平時であっても簡単なことではない。こうした区画整理事業に携わる職員不足がボトルネックになって復興が進まないのが現状だ。他自治体からの応援も仰いでいるが限界はある。この状況は是正しなければならない。

 これに対して、現在、いくつかの被災地でコンストラクション・マネジメント(CM)手法が採用されている。ある自治体では、公権力を含めて自治体の業務を一括して都市再生機構に委託する、機構はそのうちの測量や工事などの現業の仕事を総合建設会社に委託する、総合建設会社は個別の業務を地元の企業に透明な入札によって発注する、という方式を実施している。

 これによって、職員不足というボトルネックは解消し、職員は他の業務に工数を割くことができるようになる、総合建設会社はノウハウを集中的に投入できる、地元企業にも仕事が発生し雇用が守られる、そして何より、今まで時間がかかると思われていた高台移転が大幅にスピードアップし、住民の安全が確保できるというメリットがある。
実は、CM方式は以前より検討されてきたものである。震災復興を機に本格的に日の目を見ることになったが、公共事業の費用対効果と迅速性を高める上では非常に有用である。CMは広い意味でのPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の一種である。民間の知恵を入れて公共事業をより良いものにする。現在、世界の新興国では、CMを含めた日本のノウハウに期待が集まっている。復興事業で高まったノウハウが、全国、世界で展開されることを期待している。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)