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<2013年04月>人口減少への切り札「省インフラ」への期待

 3月に国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口が公表された。2010年に1億2800万人あった人口は、25年には1億2070万人(2010年を100とすると94.2)に、40年には1億730万人(83.8)に減少する。昨年1月の推計ではさらに長期の推計が行われており、標準的なケース(出生中位・死亡中位)では、48年に1億人を切り、82年には現在の半分の6400万人に減ると予測されていた。また、2010年時点では9都道府県で人口が増加していたが、25年には、今まで増加率の高かった沖縄県、東京都を含めて、全都道府県でマイナスに転じる。人口減少という構造変化はすでに大きく動き始めている。景気対策の効果はあくまでも短期であり、人口が半減するという構造変化が景気対策で解決するはずはない。構造変化には構造改革が必要なのだ。

 かつて日本を襲った構造変化の中で最も大きなものの一つが石油危機である。1973年10から74年1月にかけて、OPEC(石油輸出国機構)原油価格は1バレル3.01ドルから11.65ドルに上昇した。エネルギー源の多くを中東に依存していた日本にとって、石油危機は絶対に乗り越えなければならない構造変化だった。最終電車の時間繰り上げ、ガソリンスタンドの日曜休業、ネオンの早期消灯、テレビの深夜放送の休止などの節約策が次々に実施された。さらに、産業界では、熱源の変更、工場での工程・製造方法の見直し、設備・機器の補修、効率的な設備への取替えが行われた。エネルギー原単位が石油危機前の数分の1になった製品は珍しくない。

 日本人は石油危機に対して、高くなった石油を今まで通り買うために景気対策をしたわけではなく、使う石油を減らそうと省エネルギーという構造改革を仕掛けたのだ。自分は石油をふんだんに使いたいとわがままを言う人は誰一人いなかったはずだ。省エネルギーは危機に対応した日本人の賢さを表す成功事例だ。

 これから起きる人口減少は、石油危機以上の構造変化だ。特に影響のあるのはインフラだ。人口と経済が右肩上がりだった60~80年代に、日本の都市は次々に拡大し、拡大後の空間に隙間なくインフラを敷き詰めた。道路も橋も水道も下水道も学校も公営住宅も同じだ。今これらのインフラがいっせいに老朽化し更新すべき時に、人口も減少を始める。

 今行うべきことは、同じようにインフラを更新することではない。仮に、最新の長寿命化技術で、今の人口に合わせたインフラを作ってしまうと、まだ多くの施設が使用されているであろう70年後には、利用する側の人口は半分になっているのだ。今後は、減少する人口に合わせて少ない量で同じ効果をもたらすべき省インフラが必要だ。

 キーワードはコンパクト化と分散処理だ。

 まず、拡大した都市をコンパクトに再生する。人が拡散して住んでいればそのための道路も橋も大量に必要だ。だが、住み替えて集中してもらえばインフラの必要量は大幅に圧縮する。学校や公民館などの公共施設は、独立して別々に作ることをやめ多機能施設として統合する。コンパクト化しなければ人口が減った分1人当たりの負担は増えるが、コンパクト化すればインフラの機能を維持して負担を大幅に下げることができる。

 ただし、すべてをコンパクト化することは難しい面もある。その場合は、分散処理が有効になる。電力の世界では大量生産、大量流通の原発、火力発電所に対して、コージェネレーション(熱電併給)、小水力、太陽熱などの再生可能エネルギーが進められつつある。下水道でもネットワーク型の公共下水道ではなく、浄化槽方式を採用すれば分散処理できる。ネットワーク型の代表でもある水道事業でも、分散給水方式が考えられる。固定施設ではなく、震災復興でも活躍している多機能トレーラーハウスを使えば、診療所、図書室、デイケア、児童館、コンビニなどいろいろな公共的なサービスを提供できる。

 いずれも、コンパクト化同様にインフラの負担を軽くしつつ機能は維持される。

 省インフラということばを念頭にそれぞれの分野を見直すだけで、アイデアは無限に膨らむだろう。かつて日本の製造業が石油危機を機に世界一の省エネルギー大国になったように、危機を好機ととらえる発想の転換が必要である。もちろん、国民一人一人、今までと同じ量のインフラがなければ我慢ならないという発想を捨てるべきことは言うまでもない。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)