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<2013年09月>インフラ老朽化問題解決で世界に誇れる五輪開催へ

 日本のインフラ整備は1964年の第1回東京五輪前後に行われた。62年首都高速、63年名神高速、64年東海道新幹線、68年東名高速など基幹的なインフラが整備された後、日常的なインフラも整備された。70年代、全国で毎年橋りょうが約1万本、公営住宅が8000戸から10万戸建設された。いずれも近年の10倍以上の規模だ。
これらのインフラは暮らしを豊かにしてくれたが、建設後40~50年経過し老朽化している。ここ1年以内でも、中央自動車道の笹子トンネル事故(2012年12月)、浜松市第一弁天橋ワイヤ切れ事故(13年2月)、東京都北区道路陥没事故(13年8月)のほか、各地で事故が起きている。70年代に建設したインフラが耐用年数の50年を迎える2020年代に向けて、今後日に日に危険は高まっていく。

 だが、社会保障費の増大と人口減少という大きな流れの中では、老朽化したインフラをすべて更新することは非常に厳しい。実は、アジア、アフリカなどの新興国をはじめとして世界の国々も大なり小なり同じ問題を抱えている。20世紀後半の経済成長は、豊かさと同時にインフラ老朽化という問題をもたらしたのである。

 第1回東京五輪が「インフラ整備の五輪」だとすれば、50年後の第2回東京五輪は、「インフラ老朽化対策の五輪」として開催される宿命にある。五輪さえ成功すれば良いということではなく、全国、世界共通のインフラ老朽化問題解決にも大いに貢献してもらいたい。その観点から何点かコメントしたい。

 第一に、五輪は聖域ではない。確かに、五輪招致がもたらす経済的、心理的な効果は計り知れない。五輪を生で体験できる子どもたちへの教育効果も数字では語れないだろう。だが、かといって、東京五輪にだけ華美な公共設計の施設やぜいたくなイベントが許されるわけではない。それが招致の勝因ではないはずだ。施設の設計者やイベントプロデューサーには、目に見える豪華さではなく、日本人のつつましさ、奥ゆかしさを上手に引き立ててもらいたい。

 第二に、この機会に東京のインフラの更新にめどを立てるべきだ。老朽化しているのは国立競技場などのオリンピック施設だけではない。道路、橋りょう、水道、下水道、学校、公民館、病院などおよそすべてのインフラが老朽化している。特に、首都高速道路は初期に建設された区間を中心に老朽化が進み、当該区間の大規模改修や改築に最大9100億円必要との試算が発表されている。危険なインフラでは世界から人を呼べない。根拠なしに「大丈夫」だというのではなく、都はもちろん国や特別区の管理するインフラも含めて早急に総点検を行い詳細な結果を公表すべきだろう。

 第三に、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ、公民連携)の活用が不可欠だ。インフラ整備を税金だけですますことは無理だ。仮にできるとしても、その余力は老朽化にあえぐ地方圏に振り向けるべきだろう。不動産価値に恵まれた東京は、率先してPPPを推進すべきだ。たとえば、首都高速道路でアイデアが出ている空中権(道路上空間の利用権を周辺土地所有者に売却)はどんどん進めればよい。また、1000億円近い事業費が見込まれている選手村は、五輪期間中だけ選手村として貸し出すことを条件に、民間が住宅として建設することが想定されている。シニア夫婦世帯向け住宅、SOHO(コンピューター利用の小規模事業所)住宅、国際的シェアハウスなど住宅系はもちろん、オフィスや商業も含めた民間の大胆な提案が期待できる。

 第四に、省インフラ技術の活用だ。老朽化したインフラを次々に更新するのではなく、予防保全や長寿命化を通じて負担をできるだけ引き下げる工夫が必要だ。東洋大学では、「できるだけサービスのレベルを維持しつつ最大限負担を引き下げる技術」を総称して「省インフラ」と呼んでいる。改築される国立競技場は省インフラ技術の粋を集めた模範となることを期待したい。聖火は、64年に使った鋳物製の聖火台に、聖火ランナーが人力で点火する素朴な方式が良いと思う。

いずれにせよ、インフラ老朽化というピンチをチャンスに変えるのが東京五輪の役割だ。生かせるかどうか関係者の知恵が問われているのである。 
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)