1. 東洋大学PPPポータル
  2. 2007年度
  3. <2015年06月>地方創生は地域経営モデルチェンジのラストチャンス

<2015年06月>地方創生は地域経営モデルチェンジのラストチャンス

 多くの自治体が、地方版総合戦略の策定に取り組み始めた。人口ビジョン、客観的分析、数値目標などハードルは決して低くなく、筆者も頻繁に相談を受けている。

 先日、ある地方議員から、「首長が、総合戦略策定を機に、今までストップしていた公共施設整備などの政策を盛りだくさんに取り入れ、国の支援を引き出すことばかり考えている」との話を聞いた。こうした確信犯的な悪用は例外的だとしても、今、なぜ総合戦略が必要とされるのか、真の必要性を理解しなければ意味のある戦略にならない。

 真の理由とは、人口減少時代における地域経営のモデルチェンジだ。

 筆者は、ここ数年、公共施設・インフラの老朽化に警鐘を鳴らしてきた。高度成長期に大量に建設された公共施設・インフラが老朽化し、住民の生命にかかわる深刻な事態を生みつつある。更新したくても、高齢化により増加した社会保障費用に財源を譲る形で、公共投資予算は大幅に削減されている。「増大する更新投資需要を減少した公共投資予算で賄う」というジレンマに陥っているのである。

 これに、人口減少が加わる。政府が目標としている1億545万人の水準自体、現状から約2割の減少である。人口減少を不可避な事象として正面からとらえて、マイナスを最小化しソフトランディングさせることが総合戦略の役割である。

 人口減少時代のキーワードは、「固定費を変動費に変える」である。

 人口増加時代は、大量の公共施設・インフラの投入によって公共サービスを提供してきた。先行的に固定費を投じても人口増加によって稼働率が上がり効率的になった。だが、人口減少時代はその逆になる。現時点で老朽化した公共施設・インフラを従来と同じ発想で更新すると、人口が減少しても費用は減らない。税収は減るので人口1人当たり負担は増加し続ける。

 これからは、固定費を引き下げて変動費による公共サービスの提供に切り替える。すでに、(1)ソフト化(例:民営化、民間施設利用、集会所の地域移管)(2)広域化(例:文化ホール・総合運動施設・病院・消防等の広域連携)(3)多機能化(例:複合化、既存施設の用途転換)(4)統廃合(例:学校統廃合、小中一貫化、学校・公民館などの類似機能の統合)(5)分散処理(例:下水道における合併浄化槽、水道における地下水専用水道、再生可能エネルギー)(6)配達・IT(例:給水車、移動図書館、遠隔医療)(7)コンパクト化(例:コンパクトシティ、高台移転)―など、具体的な方法論が確立されつつある。

 いずれも、従来の考え方と異なる大きなモデルチェンジである。地域には、今まで通りの固定費型の公共サービスを声高に要求する市民がいるかもしれない。だが、人口減少期に固定費型の投資をすると莫大(ばくだい)な将来負担を残し、その負担は、巡り巡って他地域の住民もしくは自分の子供や孫に押し付けられる。自分だけは今まで通りというこうした理不尽な要求に迎合・妥協してはならない。特に、若者に期待する。積極的に投票所に行き、次の日本を創る国民としての権利を堂々と行使してほしい。

 残念ながら、モデルチェンジのチャンスは一回しかない。今、多くの公共施設・インフラを固定費型で更新してしまうと費用構造は今後100年変わらないだろう。今の高度な技術で公共施設・インフラを作ると100年維持できるからである。

 こうして考えると、なぜ今総合戦略を策定すべきなのか、人口ビジョン・客観的分析・数値目標が必要とされるのかの答えは明らかだろう。ラストチャンスを生かすか否か、その責任は地域自身が負うのである。
 著者:根本 祐二(公民連携専攻長)