先般、内閣府より提示されたPFIガイドライン改訂に対する意見募集にあたって以下の意見を提示しました。こうした意見は多くの人に周知され議論の材料として用いられるべきものであると考え、ここに開示します。
内閣府案
○VFM とは効率性の議論であり、必要性の議論ではない。必要性の議論は、公共性原則、即ち、行政サービスとしてどうして必要なのかという観点から、また、後年度財政負担能力の観点から、VFM の議論とは別異に行う必要がある。
○VFMの評価の必要条件として行うフィージビリティスタディの前に、「公共性原則」を充足するか否か、そもそも公共事業として行うかどうかの過程をきっちりと踏む必要がある。具体的には、費用対効果分析、あるいは、行政評価上の効果分析を行う必要がある(以下略)。
東洋大学修正意見
○VFM は、行政サービスとしての必要性(事業の内容、規模、立地、手法など)を判断する際も社会的な費用・効果の検証の方法として用いること、また、民間提案を幅広く誘導できるよう選定基準の加点項目にするなど工夫すべきである。ただし、VFM>0であることで必要性が証明されるわけではないことには十分な注意が必要である。
理由
行政サービスとしての必要性とは、サービス供給の社会的費用と、得られる社会的便益のバランス、すなわち効率性と密接に関連する概念であり、効率性指標であるVFMが活用しうる。また、効率化の知恵を期待できる民間提案が大きな意味を持つ。
改定案は、VFM>0であることを理由として行政サービスを決定することを懸念していると推測されるが、逆に、必要性の判断を効率性の検証から切り離すことは、効率性を度外視した必要性の判断を促しかねない。また、費用対効果分析や行政評価上の効果分析を求めているが、行政内部で完結する方法では、結果的に行政のアプリオリな判断を追認するだけになる懸念がある。
本提案は、こうした弊害を除去するために、効率性指標として官民問わず広く知られているVFMを活用することを趣旨とする。民間提案により、あるいは行政提案の場合でも第三者委員会による検証を行うことにより、社会的便益や費用を開示し客観的な判断材料とすることができる。
もちろん、VFMによっても社会的費用対効果を明確に把握することは難しいが、この点は他の手法においても同様である。少なくとも、同一条件下での相対比較(たとえば、駅前公有地に図書館を建設するか博物館にするか)、サービス供給方法の優劣比較(公共事業、PFI、指定管理者、民営化などの選択)等の場合には、現状でも工夫すればVFMを活用できる。
これにより、社会的費用対効果の観点からより優れた事業が起きることで、財政の効率化、住民の生活の質の向上、民間・NPOの機会拡大の3つのプラスを期待できる。
また、実効性を高めるため、民間提案を積極的に推奨するべきである。現状の提案制度が機能していないのは、提案事業者にインセンティブがないためである。このため、対象事業の内容、規模、立地、手法の重要部分が採用された場合には、その提案に知的財産価値があったものとみなして、事業者選定手続きにおいて加点する方法をあわせて提案する。